短期連載・坂口孝則の情報収集講座(坂口孝則)

この大学からかぞえて20年ほど、ずっと「調べて書いて、発表する」行為を続けてきました。社会人になると、「この資料作っておいて」といきなり言われるケースは多いはずです。むしろ、会社員の仕事の大半は、資料作成といっても良いかもしれません。そこで自分なりに総括したい気持ちもあり、『情報収集講座』と題し、短期連載としてメルマガに掲載することにしました。

【第21回】応用編 産業材料価格推移や物価調査

ここからは応用編として物価関連をとりあげます。まず、産業材料価格推移です。難しく考えず、会社間で取引する材料価格だと思ってください。そこで役立つのは、日本銀行の時系列統計データ検索サイトです。 

□時系列統計データ検索サイト(日本銀行)http://www.stat-search.boj.or.jp/index.html
→さまざまな指標がありますが、金融関係やマクロ経済研究等のお仕事ではない限り、使うのは物価に関するものです。

1. 「物価関連(PR)」と表示がありますので、選択してください。 

2. 左の「検索メニュー」から「2.系列名称検索」を選択してください 

3. たとえば「アルミ」と入力し検索してみましょう。無数の候補がヒットしますので、そこから任意の材料名を選択します 

4. 任意の期間を設定しCSVファイル(あるいはテキストファイル)をダウンロードすると、対象とする材料の価格推移がわかります

なお、2.では「2.系列名称検索」を選択するようにお話しましたが、「1.メニュー検索」から調べることもできます。その際は、「企業物価指数2010年基準」から「展開」をクリックし、「国内企業物価指数」を選択後、調べたいものを選択してください。

また、これらのデータをすべて一括ダウンロードし、そこから必要な項目を抜き出すこともできます。 

□物価、資金循環統計、短観データの一括ダウンロード(日本銀行)http://www.stat-search.boj.or.jp/info/dload.html 

そこに「企業物価指数(CGPI)(系列名称等あり)」がありますから、そこからダウンロードしてください。なお、私は毎月このデータをダウンロードし、ざっと、どのようなものが値上がり/値下がりしているかを確認しています。

*さらに具体的な物価を調べる

さらに具体的な物価を調べるときについて説明します。製造業に近いひとであれば、市況データを確認できるサイトを紹介しておきます。

□日刊鉄鋼新聞(http://www.japanmetaldaily.com/
→鉄鋼や非鉄関連の市中相場情報を確認できます 

□KITCO(http://www.kitco.com/
→金銀、アルミニウムなどの市中相場情報を確認できます 

□一般社団法人日本鉄リサイクル工業会(http://www.jisri.or.jp/market/market_kakaku28.html
→鉄スクラップの市中相場情報を確認できます。 

□「電子部品年鑑」(中日社)
→電子電気部品を中心とし、品目は限られますが、生産量や平均価格推移を確認できます。

くわえて食品・農林関連価格について紹介します。

□農業物価統計(農林水産省)http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/noubukka/
→農作物と農業生産資材(肥料等)の価格推移を確認できます。 

□森林・林業統計要覧(林野庁)http://www.rinya.maff.go.jp/j/kikaku/toukei/youran_mokuzi.html
→木材関連の平均価格を確認できます 

□「酒類食品産業の生産・販売シェア」(日刊経済通信社)
→酒類の小売価格だけではなく、卸売価格などの動向が掲載されています。 

□生鮮食料品価格・販売動向調査(農林水産省)http://www.maff.go.jp/j/tokei/kouhyou/seisen_doukou/
→生鮮野菜の価格と販売数量が掲載されています。

次に建設関連です。

□「積算資料」(経済調査会)
□「建設物価」(建設物価調査会)
→泣く子も黙る定番です。建設用資材と、労務費等の市中価格が掲載されています。 

□「土木施工単価」(経済調査会)
→これによって土木工事等の施工にまつわる市中単価を確認できます

その他、みなさんが関わる業界においても、価格推移を独自にまとめているものがあるかもしれません。「年鑑」「市場動向」「料金表」「便覧」といった名称で発売されるケースが多いので、いちど調査してみましょう。

なお、多くは聞き取り調査で構成されていますので、実態とかけ離れているケースもありますので、注意しておいてください。

【第21回】応用編 家計調査等を使いこなす

家計調査とは文字どおり、家計の収入・支出,貯蓄・負債などを毎月調査しているもので、総務省が実施しています。家計を事細かに分析して、いったいどんなものにいくら払ったか、あるいは貯蓄したか、または使途不明金かを丸裸にしています。

みなさんはよくニュースやバラエティ番組で「○○への消費が○%増えた」とか「○○県は○○関連の支出が日本一」とか聞いた経験があるはずです。これは家計調査を元にしています。

この家計調査はやや調査の対象に偏りがあると批判されています。たしかに、毎月の支出を細かに記録できるひとは限られています。それにその精度も疑おうと思えば、疑えます。しかし、同時にこの家計調査は、世界に類を見ないほどのマーケティングツールとなっています。かなり細かに、消費者のトレンドがわかるのです。

また、家計調査はかなり気合が入っている調査のため、かなりデータが分岐しており、あまりにごちゃごちゃしてわかりにくい。そこで厳密さを排除し、大胆に使い方をご説明します。

1. 「家計調査 統計表一覧」(http://www.stat.go.jp/data/kakei/index3.htm)に進んでください
2. 「時系列データ」を選択、「二人以上の世帯」をクリックしてください
3. ここからは目的によりますが、意図的に「長期時系列データ(年)」を選びます
4. 「18-2 1世帯当たり年平均1か月間の収入と支出-二人以上の世帯うち勤労者世帯」のところから、「(平成12年~26年)(全国)」をダウンロードしてください

すると、日本の家計が何にいくらくらい使ってきたかのデータがわかります。これは凄い、と私は思います。物価ではなく、中長期的に消費者が何にお金を使ったかがわかるからです。

また、さらに細かく調べたい場合は、前述の2.において「時系列データ」ではなく、「詳細結果表」の「二人以上の世帯(平成12年から掲載)」にある「*月」を選択してください。そこから、最新月を選び、四角で囲みDBと書かれている箇所(たとえば「全国」「二人以上の世帯」など)をクリックしてください。そうすると、カスタマイズして調べられます。

なお、「家計調査 統計表一覧」から進める「品目別都道府県庁所在市及び政令指定都市(※2)ランキング(二人以上の世帯)」がバラエティ番組や情報番組の元ネタになります。

ところで、この家計調査は単位を年あるいは月など選択できます。とすれば、商品によって何月の売れ行きがよいのか、といったことも分析できるはずです。また、気象庁が過去のデータを公開しており、気温や降水量などを検索できます(http://www.jma.go.jp/jma/menu/menureport.html)。ここでは詳しく話せないものの、たとえば、気温と売れ行きなどを分析してみてはどうでしょうか。

よく、「今年は悪天候が続いたので、小売店の販売成績が芳しくなかった」などといった発言を、私たちは無批判に受け入れがちです。ただ、それを実際に調査するひとはほとんどいません。実際にデータをつきあわせてみると、気温などはさほど無関係であるとご理解いただけるはずです。それでは消費者の行動に何が影響しているのでしょうか……。こういうことを考えて実際に手を動かすとおぼろげながら仮説が思い浮かぶでしょう。そして驚くことに、これらはすべて無料で公開されているデータなのです。

*国勢調査も使える

国勢調査とは、おなじく総務省が「日本に居住している全ての人及び世帯」に実施しているものです。国内の人口、世帯、産業構造、学歴、通勤手段など、さまざまなものを調査しています。

□国勢調査(総務省)http://www.stat.go.jp/data/kokusei/2015/index.htm
→あまりに膨大に及ぶため、目的によって使い分けるしかありません。ただ、私の経験的には、ビジネスとして役立つのは、国勢調査内にある次の調査結果です。

□人口等基本集計
→ここで細かな地域ごとの高齢者の比率がわかります。マーケティングなどに活用できます。さらに母子家庭の多寡なども調査できます。

□職業等基本集計、
→たとえば、特定産業に属するひとたち向けの宣伝広告を検討しているときには、ターゲットとなるひとたちがどれくらい存在しているかを確認できます。

もちろんこれらは一例にすぎません。まずは条件を変えてさまざまなデータをダウンロードしてください。

 <つづく>

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