バイヤー現場論(牧野直哉)

5.サプライヤが会議に出席するとき

バイヤーが関係する業務では、サプライヤと打ち合わせではなく、バイヤー企業の会議に、サプライヤが同席する場面も想定できます。こういったケースは、品質か、納期といった点で、なんらかの問題を抱えている場合です。できれば、避けたい状況ですが、そんな事態へ直面した場合の対処です。

① 必要性の判断

想定される状況を、納期を事例に考えてみます。たとえば、こんな状況です。

サプライヤからの納入が遅れており、ついには自社の生産を止めざるをえなくなった。製造部門や生産計画部門から厳しいクレームが寄せられており、「直接サプライヤから話を聞きたい」と、サプライヤを交えた報告会開催を要請された。

さらに状況を分解して考えます。

調達・購買部門は、サプライヤの現在・最新の状況を、正しく掌握して、必要に応じて社内へ情報を展開し、かつ社内の関連部門に対応を要請しなければなりません。そんな社内から「サプライヤを呼べ」との要請は、調達・購買部門が正しくサプライヤを管理できていないと判断された可能性が高くなります。調達・購買部門としての言い分もあるでしょう。しかし、そういった形で強く要請を受けた場合は、サプライヤを呼び出す前提で話を進めなければなりません。

② 誰に味方するのか

こういった状況で、調達・購買部門は、サプライチェーンでも立場的にも社内関連部門とサプライヤの間に位置します。この状況を「板挟み」と捉えるのか、それとも両者の間で、問題解決を主導するかは、社内のみならず、サプライヤから見た調達・購買部門の評価にも影響を与えます。

もし社内から「サプライヤを呼べ」と言われた場合、調達・購買部門は、どちらにもくみしない、フェアーな立場で状況判断をおこないます。サプライヤを呼ぶ場は、つるし上げの場でなく、問題解決の善後策を検討する場であると強く認識します。その上で、対処方法を検討・決定を推進します。

サプライヤ側に問題がある場合、調達・購買部門のサプライヤ管理に問題があると判断されてもやむを得ません。これは、直面している事態を打開し、次に述べる再発防止策を、サプライヤと社内関連部門と協力して策定します。問題は、発生事象に関連した社内関連部門側の原因が大きな場合です。ここで、サプライヤを同席させる会議を開催する場合の開催場所におけるレイアウトを想定します。

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このような事態を招いた原因がサプライヤ側にあったとしても、調達・購買部門から出席するメンバーは、必ずサプライヤと同じ側に座ります。理想的には、※印のポジションです。決してサプライヤだけを社内関連部門からの非難の的にしてはなりません。社内の主張を、サプライヤと同じ立場で調達・購買部門を聞く姿勢を明確に示します。サプライヤの非が少ない場合は、バイヤー企業内の社内各部門の力関係でこういった事態を招いてしまったのです。こういった状況でサプライヤは守るべきであり、少なくとも調達・購買部門は協調姿勢を示すべき存在なのです。

③ 再発防止への取り組み

サプライヤと歩調を合わせ、会議を乗り切った後、調達・購買部門はサプライヤと協力して再発防止策を検討します。まず、サプライヤになんらかの問題がある場合は、改善策を共同して検討します。フェアーな判断によって、サプライヤに非がない、あるいは少なく、むしろバイヤー企業側に問題がある場合は、まずサプライヤにおわびします。その上で、バイヤー企業側の改善策を示し、必要に応じたサプライヤの継続的なサポートを申し入れます。

トラブルに関連してサプライヤを呼び出す場合は、社内の他部門の要請を受ける前に、調達・購買部門みずからの状況判断によって、行動しなければなりません。サプライヤをコントロールできるかどうかは、実際社内が調達・購買部門にもっとも期待を寄せるポイントです。他部門からのサプライヤも同席した会議開催要請は、そういったポイントがうまくコントロールできていない危機的状況と認識して、直面した事態はもちろん、根元的な原因を除去する取り組みにつなげます。

<つづく>

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