転職を考えない人が読む「転職」のおはなし 4(牧野直哉)

今回で第4回になります。

(2) 楽しく今を過ごせ

これは、前段で述べている「現在の勤務先での不満が基点の転職」でも述べている内容と重なります。ただ、この電子書籍を手に取られている皆様は、今すぐには転職を必要としていない方です。で、あるならば、将来の来るべき転職へ臨むそのときまで、楽しく過ごすことを追求してください。ここでいう「楽しく」とは、公私ともに充実を追求することです。

私から皆さんへの提案は、楽しく過ごせている方も、そうでない方も、ぜひ今の生活の見直しをおこなってください。ここで、読者の皆様に共通する様々な生活のシーンにおけるマイナス要因の取り除き方をお伝えします。「楽しく」といっても、人それぞれに嗜好性も違います。したがって、楽しく生活を送るために、まずネガティブな要素を生活から取り除くのです。

① 睡眠
一般的には、8時間以上の睡眠が必要だとか、6時間以下の睡眠では健康リスクが高まるとかいわれています。しかし、それはあくまでも傾向の話であり、自分がその傾向に当てはまるかどうかは、実際のところ本人にしかわかりません。睡眠には、時間と深さがありますが、睡眠のメカニズムはまだ十分には解き明かされていません。ということは、試行錯誤の中で、自分にもっとも適した睡眠のパターンを見つけるしかないのです。パターンとは、
1)就寝時間
2)起床時間
3)睡眠時間
4)就寝前の行動
5)起床後の行動
6)昼間の行動
について、さまざまケースを繰り返しながら、自分に心地よい、快適な行動パターンを見つけ出すのです。例えば、私の場合では、次の様なパターンが一番快適な睡眠となります。
1)就寝時間:23:30
2)起床時間:6:30起床
3)睡眠時間:6時間~6時間30分
4)就寝前の行動:白湯をコップ一杯飲んで、腰、背中を意識したストレッチ
5)起床後の行動:二度寝はしない、白湯をコップ一杯飲んで6分間深呼吸
6)昼間の行動:昼休みに、30分のウォーキングとストレッチ
上記の6つの条件がそろったとき、もっとも快適な睡眠となります。1年半ほどの快適睡眠の追求で、ここまでわかりました。今でも、さらに快適さを追求し続けています。最近では、起床後に6分間深呼吸することを追加しました。これだけで、ずいぶんと肩や背中の張りが解消されました。自分の体から疲れを取り払うための睡眠ですから、結果は自分の体に聞くしかないのです。

② 通勤
今、通勤に関して思っていることは、「無駄」であるということだけです。できるだけ通勤時間は短く、できればゼロがもっとも好ましいと思います。特に首都圏にお住まいの方は実感されていると思いますが、毎日のように公共交通機関のトラブルが、どこかで起こっています。トラブルが自分の使用する路線で起これば、通勤時間が当然長くなります。朝だったら、一日働く前に疲れ、帰宅時であれば、一日の疲れを2倍にも3倍にも感じます。しかし、個人的な都合だったり、勤務先の都合だったりで、簡単に通勤時間をゼロにすることはできません。特に持ち家の方は、そう簡単に居住地を変えることもできませんね。であるならば、通勤時間をなんらかの「ながら時間」とするしかありません。通勤時間を、自宅と職場の移動時間+もう一つの意味と価値を持たせるのです。また、混雑のピークを避けて通勤することも一つの手段と思います。しかし、朝早く起きることで、別のストレスを生じそうですね。あるいは、少しコストを費やしても、グリーン車や指定席で座って過ごせるようにする。こうやって思いをめぐらせて考えても、抜本的な解決策は見いだせません。どうやって、通勤時間を短くするか、短くできないのであれば、どうやって意義ある時間として活用するか。けっこう大きなテーマなのです。

③ 日々の業務
くり返しますが、この文章は「転職を考えない人が読む転職の本」です。したがって、今現時点での仕事には、比較的充実感、満足感が得られていると想定しています。しかし、あえて質問します。今の仕事、楽しいですか?なに一つ、問題はありませんか。まったく問題なく、今の職場で仕事ができている人はいないでしょう。人それぞれに、問題を抱え、もがき苦しみながらも、生きていく糧を得るため、そして家族のために日夜働いているわけです。私が皆様にぜひ確認して頂きたいことがあります。ほんとうに今の仕事は充実していますか。職責やポジション、待遇面も含めて満足していますか。いろいろな問題を目の前にして、個々に改善の方向性を見いだし、対応しているのであれば、それはほんとうの充実です。そんな中で自分が動いた結果として、事態が改善していくことは、楽しくも感じられます。しかし、問題を目の前にして、立ち止まり、あるいは当事者意識を捨てていることはありませんか。私には関係ないとか、上が悪い、若いやつはダメだといって、他人の責任を見いだす事で、目の前の問題に盲目的になっていないでしょうか。そのような態度は、事態を掌握していない中で、まぁいいかという妥協の産物による現状の是認を産みます。今の満足、充実が、実態を兼ね備えたものかどうか。これは自分と向き合うことなので、一番難しいことです。しかし、ほんとうに楽しいかって追求することは必要なのです。

(3) 笑顔でクビになる準備を!

この文章の冒頭で、私は「転職とは自分の人生の進むべき道の決定権を、自らに取り戻すこと」と書きました。もし、私が転職せずにいたらどんな風になっていかを考えてみます。自分がどのようなポジションで、どんな責任を、どういったリソースの中で実現するのか、まったく想定ができません。そのような状況に自分の身を置く根拠は「最後は会社が面倒見てくれるだろう」という思いです。しかし、日常的にニュースで報道される悲しむべき事態は「こんなはずじゃなかった」ということが実際に起こってしまった結果です。そして、意図せずに現在の勤務先を追われる事態は、既に「こんなはずじゃなかった」というような、可能性が低い事態ではありません。もし、想定外に会社を追われる事態となったら、こう考えるかもしれません。会社を信じていたのに……と。しかし、そういった情緒的な確証のない期待を、今の会社に持ち続けることは、相当にリスクが高いと認識すべきです。

前にも述べましたが、私にとって勤務先からのクビにされることは、想定外でも、こんなはずじゃない事態でもありません。もしかすると、この文章を書いているまさにこの瞬間に、そんな決定がおこなわれているかもしれない。なので、準備せざるを得ないのです。そして、そのような事態に陥ってしまったら、私は3つ、心に堅く決めていることがあります。

ひとつ目は、クビの申し渡しをした相手に、心中は穏やかでないでしょうが、笑顔でお礼を言おうと思っています。けっして、毒づいて食ってかかるようなことはせず、そのようなことを私に伝えたことを労おうと思っています。二つ目は、お世話になった方々に、退職の挨拶をし、これまでお世話になったことへの感謝の意を示そうと思っています。最後には、自分の業務を引き継ぐ(で、あろう)人に、お世話になったお礼と合わせて、今の業務の状況を記した引き継ぎ書を渡そうと思っています。そして、こう呟こうと思っています。さぁ、これから何をしようか。すぐに勤務先も決まらないでしょうから、どっかに旅行にでも行き、あらためて人生を考えます。退職を告げられて、途方に暮れるよりも、笑っていたいと思うからです。ショックを受け、心にキズを受け、大切な人生のひとときを無用にすごしたくはないのです。

<つづく>

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