中堅社員が走りながらやるべき10のポイント(牧野直哉)
今回は、前回に引き続き第4回目です。
2. 市場に挑む
「市場に挑む」とは、とても勇ましい題名をつけたものです。市場とは、一般的にとても大きな存在です。ここで述べる「挑む」とは、市場を動かすとの意味ではありません。市場に対して、我々バイヤーはとても小さな存在です。ときには、大きな市場変動に翻弄され、想定外の結果に悩まされる事態もあるでしょう。
このテーマでは、次の様な読者の前提条件を設定しています。
1.20代後半~30代のビジネスパーソン
2.現在の勤務先に6年以上継続して勤務
3.生き残りたいと願っている
4.ステップアップしたいと切望している
上記の条件1と2から、例えば2008年のリーマンショックは、実務の中でのご経験をお持ちのはずです。したがって、次回また同じような事態が発生した場合には、同じように翻弄され尽くされてはならないのです。そのためには、どのように対処すれば良いのでしょうか。
(1) 予測してみる
これまた2008年当時の状況を思い返してみます。当時は、米国景気は好調を継続していたものの、サブプライムローン問題が指摘されていました。調達購買部門では、当時私は一般産業用の設備用機械メーカーで勤務していました。引き続き旺盛な需要と、高止まりした原材料費に苦しめられつつ、需要動向には明確な減少傾向はみられないものの、不透明感は増していました。
そのような状況の下、どのように需要を満たす供給をサプライヤーから確保するかが私の大きなテーマでした。調達購買部門としては、社内の営業部門から指示のある数量の確保が至上命題です。先行きも強気の数値が提示されていました。しかし、後になって出荷・売上処理を確認すると、少しずつ顧客の受け取りが遅れ気味になり、埠頭在庫が増加していました。
「予測」は、マスコミにも登場するような沢山のエコノミストがこぞって行なっています。しかし、ここで皆さんに行なって頂きたいのは、世界経済とか日本経済の動向でなく、目の前の需要動向です。自分たちにしか分からない情報も、社内に目をこらしてみれば、具体的な活動に移すに足る貴重な内容を得られる場合が多いのです。
(2) 実行
社内関連部門の動きから得られた貴重な情報を元に、従来の流れとは異なる動きを行なう場合、もっとも大きな障害となるのは、やはり社内関連部門でしょう。2008年のリーマンショック前に、様々な需要減少を予感させる「前兆」と呼べる事象が起こっていました。そんななかでも、高い需要見通しを前提とした動きをしていたかを考えてみます。これは明らかに「惰性」です。
引き続き、顧客からも強気の需要見通しが伝えられる。顧客の購入のスピードは落ち、流通在庫が増加していても、そこには注目しない。そこで、顧客からの情報に先んじて、発注見通しの下げは、とても勇気の必要な行動です。もしかすると、予想に反して高い需要が継続するかもしれませんしね。そんなとき、サプライヤーから必要となるリソースの確保ができなかったら、調達購買部門にとって大きな問題となります。それではどうするか。
企業に勤務している場合は、自分なりの確固たる見通しを持ちます。そして、自身の意見として、上位者や同僚にも伝えます。自ら収集した様々な情報を元に、見通しを持って、自社の方向性とのクロスチェックを行なうのです。そして、違う方向性となった場合には、公言するのです。公言した考えが採用されるかどうかは、上位者の意志決定の問題です。ポイントは、そのように割り切って、ただ漫然と流されるように惰性で物事を捉えるのでなく、これまでの業務における実績を踏まえ、入手した情報によって、自分で見通しを立てなければならないのです。
<つづく>