ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

決定版!サプライヤーマネジメント 8 ~区別したサプライヤーへの対応

前回は「区別」をおこなったことにより、結果的に区別されなかったサプライヤーへの対応を述べました。「区別」できなかったわけですし、「区別」したサプライヤーへの対応だけで手一杯となってしまいがちです。しかし経営戦略や事業環境の変化により、再びそのリソースを活用する場面に出くわすかもしれません。バイヤーとして動けるリソースも限られる中ではあります。しかし、既存の関係という土台があるわけです。また、急にプツッと関係を切ってしまうわけでもありません。細々ながらも、再び利用できる余地を確保することもできる限りの範囲でおこなう工夫が必要です。

読者の皆様の勤務先でも、取引先協力会、協力企業会といった名称のサプライヤーの集まりがありませんか。実際に運営に携わっている方もいらっしゃるでしょう。また、運営せずとも、会合や懇親会に出席された方もおられることと存じます。私が普段、様々なバイヤーと話をしている中で、「取引先協力会」「協力企業会」について話をしていると、それらは「形骸化」といった言葉とともに語られます。実際の運営でご苦労されている方が多いということですね。なぜ取引先協力会が「形骸化」してしまうのか。一つの理由に、メンバーの固定化が挙げられます。固定化が形骸化へと繋がってしまうのは、取引先協力会のメンバーと、サプライヤーとしての今日的な重要度にギャップが生じているからです。取引先協力会の運営には、そのメンバーをどのように選ぶかが大きなテーマです。以前も述べましたが、取引先協力会のメンバーであることが既得権化することは避けなければなりません。一番簡単なバイヤー企業としてのサプライヤーに対するニーズと、協力会メンバーとのギャップを抑止する手段は、取引先協力会という組織化をおこなわないことです。現在取引先協力会を運営しているのであれば、解散してしまえば良いわけです。しかし、いきなり解散するのも難しいですね。今回は、取引先協力会が有っても無くても、実現可能な「サプライヤーミーティング」について述べます。

サプライヤーミーティングには3つの形があると考えています。

1. 定期開催

2. 都度開催

3. 個別開催

それでは、一つずつ見てゆきます。

1. 定期開催

開催頻度:最低一回/年

開催時期:年度末の遅くとも3ヶ月前

開催目的:次年度の方針の伝達と共有

招集対象:「区別」したサプライヤー全社+α

開催内容(例、製造業の場合の周知する内容)

(1) 当年度と翌年度の売上見通し

(2) 技術開発動向・ロードマップ

(3) サプライヤー評価結果の傾向と、翌年の課題の提示

(4) 調達・購買戦略にもとづいた翌年度の活動

これは、サプライヤーミーティングの軸になる形です。新年度に際しての事業戦略にもとづいた調達・購買戦略を「区別」したサプライヤーの皆さんと共有することを目的にした伝達の場です。

あまり開催頻度を多くしすぎても、ミーティングで伝えるコンテンツ内容の品質維持が困難です。したがい、年一回もしくは多くても二回(上期・下期)開催で良いでしょう。ポイントは開催時期です。

「開催時期:年度末の遅くとも3ヶ月前」としたのは、「少し早すぎやしないか」とお感じになられたかもしれません。この開催時期は重要です。特に、自社の属する業界で、サプライチェーンの上位の階層に位置する(大手企業、親会社)のであれば、なおさらです。4月に新年度が開始されるのであれば、遅くとも1月の中旬までには開催し、次年度の方針をサプライヤーへと伝える必要があります。これは、自社の方針をサプライヤーの次年度の計画に反映し、要すれば予算処置も合わせて検討してもらうためです。タイミングを逸することで、サプライヤー側の計画とバイヤー企業側の意向のミスマッチは、実行の停滞に繋がります。大きな機会損失へと繋がるわけです。

この話は、私が経験した、実際のサプライヤーからの要望を参考にしています。正直、もっともな話ですね。開催時期から独善的だったことを痛切に感じ反省しました。以来、この開催時期にはかなりこだわっています。ただし、このタイミングでの開催は、調達・購買部門に大きな負荷がかかります。というのも、新年度開始の三ヶ月前とは、バイヤー企業側も次年度の様々な計画の策定段階にあるためです。まして、調達・購買戦略は他部門の戦略により大きな影響を受けます。しかし、そういった過程であることを踏まえた情報共有で良いのです。経済環境によっては、昨日までの正解も今日は間違いに変わります。不確定だから情報共有をおこなわないのでなく、不確定要素まで含め共有する姿勢が、サプライヤーマネジメントには重要だと考えるのです。

2. 都度開催

開催頻度:必要と判断した都度

開催時期:必要と判断した時期

開催目的:都度設定

招集対象:都度招集サプライヤーを設定

開催内容:都度決定

これは、バイヤー企業として大きな難局に直面した場合に、都度協力を要請したいサプライヤーを招集しておこないます。開催の発端となるテーマが重要です。ポイントはバイヤー企業側だけでなく、サプライヤーにとっても重要であることを、いかに説得力を持って伝えられるかどうか。そして難局を乗り越えるための具体的な成果が得られるかどうかです。もう一つ、事業運営に影響のある外部要因への対処方法の共有と周知といった形でも開催できます。具体的には、次のようなケースを想定しています。

(1) 増産・減産にともなう協力要請

(2) 方針・戦略の大幅な変更

(3) 大きな影響のある法規制の導入・変更

都度開催の場合のポイントは、開催目的を絞り込み、明確化して、ゴールも明確に提示することです。定期的な開催でないために、よりサプライヤーを集めることに価値を持たせることが重要になります。

<つづく>

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