ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)

・25のスキルと知識がバイヤーを変える

引き続き、「調達・購買担当者として必要な25の知識・スキル領域」を使ってお話したい。この25を学べば、かなりの知識・スキルを身につけることになる。この連載では、下図の25領域を制覇すべく、一つずつ解説している(新規購読者の方々はバックナンバーを見ることができるまで、1ヶ月お待ちいただきたい)。

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今回は連載の8回目だ。今回は、「海外調達・輸入推進」のD「契約・インコタームズ」をとりあげたい。前回は、「調達・購買業務基礎」のなかで、契約知識についてお話した。この続きとしてお読みいただければ、面白いだろう(もちろん今回から読んでも問題はない)。海外調達を推進しようとするとき、最後のツメは契約となる。しかし、海外サプライヤとのやり取りのなかで、調達・購買担当者が海外企業との契約のイロハを理解していなければ問題だ。

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ここでは、インコタームズから、契約書の注意ポイントまでを解説していく。

・インコタームズとは

海外調達の際には「インコタームズ」という単語に出くわす。「インコタームズ」とは、国際商業会議所が制定した 「貿易条件の解釈に関する国際規則」の略称のことだ。

物品売買契約におけるビジネスの実務を反映した、一連の三文字からなる取引条件のことで、売主から買主への物品の引渡しに伴う役割や費用および危険について述べている。とまあ、難しく考えなくていい。取引を円滑化するために、契約の雛形について、あらかじめ設定してくれているものと考えればいい。

インコタームズは、どちらの当事者が、運送または保険の費用を手配する義務を負うか、どの費用について責任を負うかを述べている。ただし、代金の支払い方法や所有権の移転や契約違反時の内容は扱っていない(完全な売買契約を与えるわけではない)ことに注意したい。

これからインコタームズを説明していくけれど、この雛形(インコタームズ)を使いたい場合は、契約書に次のように記載する。

「FOB」とはインコタームズの一種で、この段階ではご理解いただいている必要はない。ただ、まず両社で選択したインコタームズを書き、そして指定地、インコタームズの種類を明確化しておく。「インコタームズの種類」とは、上記の2010というところだ。インコタームズは2000年版もあるし、2010年版もある。その版によって、微妙に条件が変わっていることもある。だから、いつのインコタームズかをはっきりさせるのだ。

・具体的なインコタームズについて

そこでインコタームズの各説明に入る。大きくインコタームズは4つの条件からなる。

(1)E条件~出荷条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「工場から出荷するまでサプライヤが面倒をみる」条件

(2)F条件~主要輸送費抜き条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「港の近くまではサプライヤが製品を持って行く」条件

(3)C条件~主要輸送費込み条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送る」条件

(4)D条件~到着条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送るし、リスクもサプライヤがとる」条件

必ずしも厳密ではないが、上記の内容を把握し、次からご覧いただきたい。

(1)E条件~出荷条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「工場から出荷するまでサプライヤが面倒をみる」条件

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ここで、EXW(Ex-Works)をあげた。これは「イーエックスワークス」ではなく「エクスワークス」と読む。サプライヤの工場から一歩先はすべてバイヤーかあるいはバイヤーが指定した業者が運ぶことになる。注意したいのは、EXWで契約する際は、サプライヤは車両にすら積み込んでくれないことだ。よって物流業者には、サプライヤからトラック等への積み込みも依頼することになる。

(2)F条件~主要輸送費抜き条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「港の近くまではサプライヤが製品を持って行く」条件

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これはFOBが有名だ。ポイントは、港まで送って、輸出通関手続きはするけれど、それ以降は責任を(サプライヤーが)もたないとするところだ。

(3)C条件~主要輸送費込み条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送る」条件

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これはCIFが有名だ。さきほどのFOBにたいして、海上運賃とその道中の保険料が含まれている。運賃と保険料まではサプライヤが払いますよ、とする条件になる。

ここで、重要なのはCIFにおいては、サプライヤは海上運賃のお金は払うし保険もかけるけれど、リスクは負わないことだ。ここがD条件との大きな差異になるので覚えておいてほしい。金は払ったるけれど(なぜか関西弁)、責任はバイヤーが持てというわけだ。このことについて理解していない人が多い。

さらにいえば、CIFでサプライヤがかける保険は、ほんとうに最低限のものだ。役に立たないと思っても良い。この保険の範囲の「最小限」とは、衝突・座礁および火災から生じるような輸送手段と貨物の双方に影響する事故に限定されていることを指す。盗難、抜荷、不適切な取り扱いはカバーしていない。

そして最後だ。

(4)D条件~到着条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送るし、リスクもサプライヤがとる」条件

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このDDPとは、サプライヤが日本に製品を持ってくるときの輸入通関も含めてすべての費用とリスクを負うことを指す。要するに、すべてサプライヤ任せの条件がこのDDPだ。

しかし、注意せねばならないのは、サプライヤは消費税を支払う義務はないことだ。調達・購買の教科書によっては、DDPにおいては消費税額もサプライヤが支払うかのように書いている。しかし、インコタームズのDDPでそのような規定は存在しない。消費税を支払うかどうかは、インコタームズではなく、個別の討議による。

と、ここまで4つのインコタームズ条件を見てきた。

(1)E条件~出荷条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「工場から出荷するまでサプライヤが面倒をみる」条件

(2)F条件~主要輸送費抜き条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「港の近くまではサプライヤが製品を持って行く」条件

(3)C条件~主要輸送費込み条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送る」条件

(4)D条件~到着条件と呼ばれるもので、簡単にいえば「日本の港まではサプライヤが金を出して送るし、リスクもサプライヤがとる」条件

この4つのうち、バイヤーの手間がかかる順に、(1)(2)(3)(4)であることは明確だ。ラクなのは、(4)(3)(2)(1)となる。もちろん、(4)(3)(2)(1)の順に中間業者(サプライヤや物流業者)のマージンが高まることはいうまでもない。(1)(2)(3)(4)の順に、一般的には安価となる。

・CIFとFOBについて

ここで、再度CIF条件におけるサプライヤの役割について見ておこう。というのも、次回に英文契約の注意点について述べる前に、ここだけ再度強調しておきたいからだ。

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CIFではサプライヤが保険を手配はする。しかし、危険は負担しないのだ。ここが日本人には理解しづらい。繰り返しになるものの、お金は払うけれど、責任は取らないのだ。

「危険負担」とは、海上輸送や航空輸送等の物流時点で起きた損失に対して、誰が負担するかを決めるものだ。「事故が起きたときに誰が責任を取るのか」を規定したものと言い換えることもできる。

すなわち、保険料は支払っても、危険負担=Riskを負わないかぎりはバイヤーが責任を負うしかないのである。このような、「微妙」な取り決めが、海外調達においてはいくつも存在する。

ぜひ引き続き学んでいただければ幸いだ。

次回もお楽しみに

 <つづく>

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