グローバルバイヤーの英語術~英語バカとの戦い(牧野直哉)

先日、あるセミナーに参加しました。「英語で自分の未来を変える方法」と銘打たれた題名に「英語だけで未来が変わってたまるか」なんて思いながらの参加です。

壇上に登場したのは、「60歳までに1億円つくる術」著者の内藤忍さん、そして「ビジネスパーソンの英単語帳」著者の関谷英里子さんです。関谷さんは、英語の同時通訳者、内藤さんは、マネーセミナーや講演活動をされていて、英語と関係あるのかな?と思わせるご経歴です。

冒頭にお二人の自己紹介。そして内藤さんのお話から始まりました。参加者は、

英語を毎日使う人   10%(私はここでした)
英語をたまにつかう人 40%
英語を全く使わない人 50%

といった比率。自称「英語しゃべれます!」と言える人間ばかりかと思いきや、ちょっと意外な割合です。冒頭このメルマガでご紹介した「日本人の9割に英語はいらない」を取り上げ、日本人の9割に英語は必要!とのお話から始まりました。そして、現在の日本人を次の通り分類しました。

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内藤さんは、以前日本の企業にご勤務の経験をお持ちです。そして現在は、外資系におつとめされています。日本企業と外資系企業の双方を経験した上でのお話は次のような内容でした。

・外資系には仕事はできないけど、英語は話せる人がいる(=英語バカ、最近は少なくなったけれども、とのこと)

・日本人には仕事ができる人が多い。しかし、英語ができない人も多い(=仕事バカ)

そしてもっとも日本人に多いであろう「仕事バカ」になぜ英語が必要なのかを次の通り投資の世界での常識と掛け合わせて説いていらっしゃいました。

・◎部分は、相対的に人数が少ないので、競争が少ない。競争が少なければ優位に立てる可能性が高い

・「日本リスク」という観点では、日本人で、日本に住んで、日本の会社に勤めて、日本語を使ってという「日本」の集中度合いを下げるべき。多くの日本人は、「日本リスク」をとりすぎている。

・ほかにも、資産を円で持っている、日本の学校を卒業した、日本に家を持っているといった内容が「日本リスク」の象徴

そして、日本リスクをとらないためになぜ英語が必要なのか。それは現在「ほんとうの調達・購買・資材理論」でも取り扱っている「情報」について、大きな問題が存在するためです。このような例です。

先日、ニューヨークの5番街に世界最大級の店舗を開店したユニクロ。日本的に「投資先」として考えると、ユニクロの比較対象は「しまむら」になります。しかし、ユニクロはしまむらをライバルとは考えていなくて、H&Mだし、ZARAだし、GAPでしょうというもの。ユニクロのライバルを「しまむら」と考えるのが日本リスク的思考で、H&M、ZARA、GAPと考えるのが英語圏での考え方というわけです。

この例は、こんな記事もあるので少し前の考え方かもしれません。しかし「少し前」と表現した時差が投資の世界では重要なわけですね。

私も内藤さんと同様に、比較的伝統的な日本企業から、米国系外資に転職しました。会社を移って驚いたことの一つにやはり「情報」にまつわる話があります。新規商談のネタ元がまったく異なります。私は設備関連機器に一貫して携わっています。日本であれば、新規商談の情報は商社だったり、当該官庁からもたらされます。しかし今の勤務先では、最終的にはインドに納めるプロジェクトだけど、ネタ元は英国といった具合です。そしてものづくりの拠点は上海で、調達の拠点は日本なんてことになるわけです。

日本は一昨年まで世界第二位のGDP、今だって三位です。これほどの経済規模にまで日本を発展させ、そして今なんとか維持している。ということは、日本人はグローバルな視点で見たとき、仕事ができる=優秀であるわけです。そして先ほどの4象限の表に戻ります。先ほど日本経済を「なんとか維持している」と書きました。これはもう「仕事バカ=仕事はできるけど英語はできない」のではダメになりつつある証左ではないかというわけです。

日本語環境と、日本語+英語環境では、どちらの方が情報量は多いでしょうか。このメールマガジンをご購読の皆様は、実際読んでいるかどうかは別にして、英文表記のインターネットのホームページが問題なく画面に表示されますよね。ということは、手の届くところに英語圏の情報はあるわけです。日本語環境と日本語+英語環境での情報量の差を「ゆがみ」と表現していました。その「ゆがみ」の一方である英語環境にはまだビジネスチャンスが多くあるのです。一つの例はこうです。

今、日本の人口は減少しているといわれています。一方、先月末に世界の人口が70億人に達する見通しが示されていました。増加のスピードは1分間に150人。2043年には90億人、2083年には100億人になるといわれています。世界最大の経済大国である米国でも人口は増えています。日本の「人口が減っている」との事実は、グローバル視点で見たとき、希少なものなのです。人口が減りゆく社会で、経済は椅子取りゲームですね。しかし、海を越える=海外に目を向ければ、誰も座っていないし、座るために競争もない椅子がまだ多く存在する。ただし、海外でおこなわれる椅子取りゲームに参加するためには、日本に居を構えていたとしても、英語には取り組まなければならないというわけです。

参加したセミナーの題名は「英語で自分の未来を変える方法」でした。私は英語ごときで変わってたまるか!なんて不遜な姿勢でのぞみました。そしてやっぱり現時点では変わっていません。なぜなら、既に米国系外資に転職した時点で、私の未来は変わっているためです。今回出席したセミナーで示された未来は、私が今まさに歩んでいる道程なのです。そして、先ほどの4象限に今一度戻ります。

残念ながら「英語バカ」と表現されてしまった人。実際に自分が勤務する会社ではどうか、と思いを巡らせてみました。すると、やっぱり思い当たる人はいますね。業務ではなにをしているかわからない。活躍の場はパーティーです。忘年会ともなれば、自慢の英語を駆使して英語しかしゃべれない人=マネジメントの皆さんを笑いに包みます。まさに男芸者です。でも、そんな人を私はこう考えていました。私ができない英語が彼はできるんです。だから少なくとも私よりも優れている面がある。だから私は英語でのコミュニケーションができるようにならなければならない、英語で笑いもとれないといけない(笑)と。だから紆余(うよ)曲折ともいえるいろいろな試みをおこなっているのです。

いつか、アメリカンジョークを恥ずかしげもなく言うために(ちがうか!)

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