人が面白いと思ってくれる話をするには(坂口孝則)

このテーマきましたね。これはすごくチャレンジなんです。というのも「人が面白いと思ってくれる話をするには」といいながら、その話が「つまらない」と思われたらどうしようもない。これは自分自身へのプレッシャーです(会場・笑)。

まず、これをご覧いただきたいんですけれども。ぼくの出版予定を書いたものです。

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これ……。呆れるくらい本を出すことになっているわけですけれども、「どうやってこんなにコンテンツを思いつくんだ」とか「どうやったら面白い内容を作り続けることができるんだ」、少なくとも「出版社、編集者が面白いと思ってくれる内容を作ることができるんだ」という質問をもらうときがあります。

それはもちろん、思いつきや勘や経験に頼っているわけではありません。それは偶然に任せるっていうことでしょう。そうではなく、論理的に考えて、「面白いコンテンツを産み出していこう」ってやっているわけです。

そこで、一つの材料を出します。この本、たいへん面白い。飯田泰之先生と勝間さんが作った「日本経済復活 一番かんたんな方法」という本です(書画カメラを使い、画面に大きく表示される)。ぼくの経済理論の基礎となった先生たちの考えとも近いところがあって……。まあ、リフレ派と呼ばれているみなさんで、言っていることは正しいし、納得できる。

でも、一つだけ不満がある。「面白い」と言い切ってしまうのにはためらいがあるんです。「財政政策や金融政策が大事なのはわかった。それに、政治も大切だ」。それはわかるんです。でも、個人として明日から何をやっていいかがわからない。でね、ぼくは勝間さんが何を書いてくれるか期待していた。勝間さんは日ごろから「読者の明日へのアクションにつなげる」ことを信条となさっているわけです。

じゃあ、勝間さんはこの本を読んだあとに、読者に何をアクションさせようとしているのか。

すると、書かれていたのが「ツイッターでつぶやこう」だった(会場・爆笑)。いや、これはないんじゃないかと(笑)俺なんかは思うわけですよ。政治家に「デフレ脱却してー」とつぶやきましょう、と。ちょっと笑っちゃいました。

これは勝間さんがダメだという議論をしているわけじゃありません。面白いコンテンツとは何か、ということを考えるに、どうも「じゃあ俺は明日から何をすればいいの」という内容をちゃんと提示できるかどうかがキーになるということです。

そこで考えているのは、こういうことです。面白い話には、次の三つの要素が入っているべきではないかって。

「FACT」:まず事実がなければいけない。読者に「あ、そういうことがあるんですね」と思わせる事実。「そりゃ知らなかった」と思わせなければいけない。まず驚いてもらえるような事実がなければいけない。
「LOGIC」:そして論理。まあ理論と論理は違うわけですよ。でも、いずれにしても事実と事実を結びつけるような理屈ですね。なぜその事象が起きているのか、その事実はなぜ起きたのか。それが知りたい。
「ACTION」:最後に「じゃあ俺は明日から何をすればいいの」というのを具体的に提示しなければいけない。これをやればいいんだ、と読者が腑に落ちる内容を、です。

おそらく「面白い」そして「役に立つ」コンテンツを作ろうと思えば、上記の三つが盛り込まれている必要がある。いや、むしろこの三つさえあれば、その他のプレゼン能力とかは不要じゃないか。そんなことを考えているんです。そこで縦軸に「面白い」、横軸に「役立つ」と立ててみたんですけれど……(書画カメラで図を表示)。

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順序がいろいろ入れ替わっちゃいますけれど、「FACT」が面白さを演出する。そして「ACTION」が役立ち度を演出する。そして「LOGIC」は深みを演出します。たとえば、株売買の「○○チャート必勝法」なんてのは、たしかに「ACTION」はあるけれど、理屈がない。深みもありません。ぼくたちが目指すべきは、まず「FACT」があって「ACTION」「LOGIC」も網羅しているもの。

逆に、この三つがあれば、ほとんどの資料やコンテンツが「面白い」と思ってもらえる。誤解かもしれないけれど、そう認識される。誤解でもいいんです(牧野「誤解でいいんですか?」というツッコミが入る。坂口「誤解でもいいんです」)。

マンガ120コマの法則というのがあります。岡田斗司夫さんがいっていたことなんだけれどマンガには人気を博す理由があるんですよね。いま280万部の少年ジャンプは、かつて560万部も売れていた。そのときにジャンプの編集長に「なぜそんなに面白いんですか」と、他の編集長が訊きにいったようなんです。すると、その答えが「オタクのマンガは120コマないでしょう」だった。意味わかりますか。たいてい、連載マンガは20ページくらいです。ということは120コマになるためにはページあたり6コマ必要なわけです。

そこでその編集長が確認したところ、「ほんとだ、ウチのマンガは120コマない」と驚いたらしいんです。90とか100しかない、と。なぜか。少年たちを魅了するっていうのは、意外と形式に左右されることがあるんですね。120コマを少年たちに見せる。キャラクターとの接触回数を増やす。もちろん、マンガで大切なのはストーリーや作画、キャラ萌えとか言われていますけれど、ほんとうはコマ数を増やして読者との接触回数を増すところにあった。

こういう話なんかをマンガ編集者にすれば、間違いなく明日からの行動に変化をあたえるわけです。これが「面白い」「役立つ」話の一例としてお伝えしました。

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