バイヤーが不要になる日(牧野直哉)

今、日本経済は円高で苦しんでいるとされています。

過去の円高の局面では、日本メーカーの海外進出が進んで、日本のバイヤーは海外調達に活路を求めました。そのことで、日本の産業構造の空洞化が進むとされています。そして今回の円高では、バイヤーが空洞化の象徴となってしまうのではないか、との危惧を持っています。

90年代中盤、Window95の登場と共に、パソコンが企業にも一般家庭にも急速に浸透しました。そしてある時期にパソコンメーカーの顧客満足度を測る指標がなんだったか、御存知でしょうか。答えは、コールセンターへの電話の繋がり度合いなんです。何回目の電話でコールセンターへ繋がったかがパソコン雑誌の記事になっている時代でした。

そしてパソコンメーカーのコールセンター。

今、Googleでコールセンター 場所という言葉を検索すると、

「コールセンター 大連」

「コールセンター 沖縄」

というサジェストが提示されます。

コールセンターとは、労働集約的です。故に、日本国内で人件費が安価であるとされる沖縄に、さらに安価な中国の大連へ移っているわけです。このコールセンターが置かれる場所の移り変わりの原因は人件費です。提供される価値に対して、人件費が合わない。なので、より人件費の安価な地域へと移っている。

これと同じ事がバイヤーにも起きているんです。

先日、地元の中小企業のオヤジ達を相手に勉強会の講師をしました。

勉強会の後に、懇親会がありました。その場でのバイヤーへの評価は辛辣なものでした。なんで、あんなにモノを知らないんですか?約束は守らないし……何かあれば怒鳴ればいいと思っている……等々。

提示された見積に、高いから5%安くしろ!10%値段を下げろ!としか言わない。そんなバイヤーの付加する付加価値って なんでしょう。我々バイヤーが、国内サプライヤーに対して人件費をやり玉に挙げて海外メーカーを選択した。それと全く同じ理由での判断が、経営者によって我々バイヤーに下され始めているに過ぎないのです。

別におかしな話ではありません。単純に

「バイヤーの給料>付加価値」

であるだけです。そして、もう一つ。

「日本のバイヤーの給料>海外のバイヤーの給料」

ということで、日本からバイヤーがいなくなってゆくのです。仕組に責任はありません。バイヤーのこれまでの立ち振る舞い、そして現在進行形で発生費用分の価値を生んでいないだけです。とっても単純な話なんです。

例えば、今回騒がれているいる円高。輸出産業への影響ばかりが喧伝されています。しかし、円高ってほんとうにデメリットだけなんでしょうか。今回の円高局面で、日本国内のサプライヤーに対して、見積金額に含まれる外貨ポーションの有無を確認した方いらっしゃいますか。(ぱらぱらと、手が挙がる)

挙手して頂いたみなさん、さすがですね!

さも日本全国が、円高で苦しんでいると伝えられる中、メリットの有無を追求するアクションを起こせたかどうか。置かれた状況と喧嘩しても、何も変らず鬱憤だけがのこります。でなく、例えば今回の円高では、メリットを追求する。短絡的に海外調達でなく、国内調達でもドル発生コストの有無を確認する。そんな姿勢がないと、ますます日本からバイヤーがいなくなってしまう。それは、バイヤーそのものに原因があるのです。

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