1万円札を燃やす勇気(坂口孝則)

・期待値とそれを実行する勇気

100円を持っているとき、このように問われるとします。「ある箱にその100円を入れると、50%の確率で220円になります。しかし、50%の確率で0円になってしまいます。さあ、この箱に100円を入れる勇気はありますか?」。

おそらく、たったの100円であれば、この箱に入れる勇気はあるでしょう。このメルマガを購読なさっている人にこの計算式を述べるまでもありませんが、期待値は

220円×50%+0円×50%=110円

だからです。ということは、計算上は10%もリターンがあります。それに100円であれば、捨ててしまっても問題ない、と思うでしょう。

しかし、これが100万円だったらどうでしょうか。同じ確率で220万円と0円だったら、期待値は110万円になります。同じ10%は変わりません。ただ、期待額は当然高くなります。

ところが、です。実際に100万円をつぎ込む勇気がある人はそれほどいないでしょう。期待値が計算上、いかに110万円でも、「それが0円になってしまうかもしれない」という恐れが優先してしまうからです。

おそらく、この100万円をつぎ込むことができるか、で人間が二通りにわかれてしまうと私は思います。

私はどうか。間違いなくつぎ込みます。それはある種の勇気があるからですが、それ以上に好奇心を抑えることができないからです。

私は毎月無数の本を買います。そのほとんどが何の役にも立ちません。セミナーにも無数参加します。何万円するセミナーにも自腹で行きます。これも、そのほとんどが面白くないものばかりです。周りからは、「買うのを控えたら」とも言われます。しかし、私はそうは考えません。たとえ、300万円をつぎ込んだとしても、結果として301万円になってくれるなら、その価値があると信じているからです。

自己投資をケチる人と話すと、「お金がもったいない」とか「投資効果が見えない」と言います。しかし、それは当然です。教育で短期的に効果がでるものなどほとんどありません。それに、確実にリターンをもたらしてくれるものもありません。自己投資であっても、それが「投資」である以上はリスクはあります。しかし、リスクをとらない人にリターンは絶対にありえません。

・1万円札を燃やす、ということ

私は、自慢ではありませんが、かなり金融資産を増やすためにさまざまなことをやってきました。国内外の株式や、債券、為替・FX、信託やREIT(リートと呼びます)などなど。しかし、この1~2年でほとんど止めてしまいました。やっているのは、インデックス投資だけです。これならば、毎月定額を引き落とされるだけで、気にかけることもありませんからね。何より、確実なリターンをもたらすのは自己投資だと再認識したからです。

私のような才能の無い者でも、世界中の人が考えてくれたノウハウを読んで、話を聞いて、実行に移すだけで、それなりのリターンを生んでくれます。それは間違いなく一般的な株式投資よりも自分に利益をもたらしてくれます。

私の本を買ってくれた人であればおわかりかもしれませんけれど、私の「決め」の文章は多くが文豪の文体を模倣したものです。「激安なのに丸儲けできる価格のカラクリ」の第5章は、太宰治の「人間失格」をパロディにしたものでした。もちろん、それは私のアイディアでしたけれど、文才がなくても、多量に本を読んでいるうちに勝手に思いつくものなのですよ。

もし、これをお読みの読者の中で、独立しようと考えているわけではなくても、お金を稼ぐことを真剣に考えている人がいれば、金森重樹さんの「お金の味」をお読みになることを強くお勧めします。自己投資することと、そのリターンをいかに考えるか。深い示唆に富んだ本です。

金森さんは以前より、「1万円札を燃やす」という表現をしています。お金を払って、より大きなリターンを目指すこと。そこから少しでも知識を得ていくこと。1万円札を燃やす勇気がなければ、人並み以上の活躍はできません。1万円札を燃やしても(1万円を投資しても)、それが確実にリターンをもたらしてくれるわけではありません。ただ、それを燃やさなければ、リターンはもたらされません。

私は最近、各領域のプロフェッショナルとお会いすることが多いのですが、彼らは信じられないほど自己投資に貪欲です。40万円のセミナーに迷いなく参加するような人ばかりです。それらを無数に経験したり、無数のチャレンジをすることを通して、大きなリターンを得ているわけですね。「1万円札を燃やす」という表現にぴったりではないですか。

かつて「自分の年収の5%を自己投資にまわせ」といった人がいました。ある方からいわせれば、それは違うそうです。正確には「自分の得たい年収の5%を自己投資にまわせ」ということだそうです。年収2000万円稼ぎたい人は、100万円を自己投資すればよいわけですね。

ドラッカーは、知識労働者の時代を予言しました。しかし、現在の知的労働者の仕事は「知的労働」ではなく、工場のスパナがパソコンに代わっただけで、実質は知的蟹工船といわれるようなものです。自分の肉体を時間売りしているにすぎません。ただ、これからはアジアの安い労働力が日本のホワイトカラーの仕事を奪う波がやってきます。これまでの知識レベルでは足りず、日々自己投資をしながら研鑽に努めねばなりません。

「1万円札を燃やす」勇気のある人か、ない人か。別にこれは脅しではなく、これからの時代を生きるうえで、一つの分岐点であろうと思います。

あなたは、どちら側に立っているでしょうか。 

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