ほんとうの調達・購買・資材理論(坂口孝則)

自民党が40億円で買われる日

自民党を買収できるかもしれない。

そんなウワサが流れていることをご存知だろうか。自民党はかつて500万人の党員を誇っていた。90年代のことである。それが、民主党政権になってからは100万人にまで減ってしまった。

500万人の党費が確保できていたところを、100万人の党費でまかなわなければならない。このような例えが適切かはわからないが、月あたり50万円の収入があった家庭が、月あたり10万円の収入になってしまう。これは想像しただけで生活に窮することがわかる。

さて自民党の党費とはいくらだろうか。年間4000円である。ということは、

100万人×4000円=40億円

である。ということは40億円規模の「ビジネス」を行っているのが自民党であり、もし40億円を出資できる人がいれば、すぐさま自民党員の過半数を確保できることになる。いまでは民主党の影に隠れ報道もされなくなった自民党だが、そのような状況にあることは知っておいても良い。

ほとんどの人は覚えていないだろうが、自民党の参議院選挙のポスターを見たことがあるだろうか。緑一色と、オレンジ一色の、あれである。リンクを貼っておこう。 http://bit.ly/aq0caF なぜこのように地味なポスターになってしまったのか。それはコスト削減のためだったといわれる。複数色よりも単色の方がコストは安い。自民党は、ついに間接材のコスト削減にまで足を踏み入れざるをえなくなったということだ。このコスト意識の突然の芽生えは、私にとっては衝撃的だった。

不景気になってくると、あるいは予算が厳しくなってくると、コスト削減に注力せざるをえない。これまでダダ漏れだったお金を管理することは良いことだ。そう一般的にはいわれている。

これまで外郭団体等にお金をばらまいていた。そしてその外郭団体経由で、さらに下の既得権益者でお金が流れていた。しかしそれでは、中間マージンが発生する。ならば直接、民間に投資したほうが中抜きできるし、介在している団体の経費も削減することができる。このような議論がなされている。

もちろん、これまで私は中抜きをすることによるコスト削減を勧めてきたし、それを否定するつもりもない。しかし、マクロ的にいえば、そのような中抜きが必ずしも経済に好影響を与えない、という話をする。

・100円の投資は拡大していく

一般的に、企業の製品のうち50%から60%は外部調達品である。100円の製品を作るためには、50円、もしくは60円を外部から調達する必要がある。もちろん、外部調達だけではなく、業務委託の場合もあるだろう。

たとえば、ここで議論を簡易的にするために、60%=0.6という数字を使わせてもらう。100円をもらったら、60円を使うモデルだ。そして、その60円をもらった人は、36円を使う。さらにその36円をもらった人は、21.6円を使う。

すると、ある仕事を受注した人が、その下の人に仕事を依頼し、さらにその下の人に仕事を依頼することになるから、合計(=S)は、

となる。0.6という「消費性向」がマクロでどれくらいの経済効果を生むのだろうか。中学校のときの数学を思い出してほしい。これはこのように解けたよね。

念のために説明しておくと、元の式の両辺に0.6をかけて、それを下に持ってくる。そうすると、計算ができるようになる。

式を二つ作って、上の式から下の式を引くわけだ。そうすると、0.4S=0.6ということになる。

なんだか中学校の授業のようですまない。ちなみに、「∴」とは「ゆえに」という記号。ここで、S=1.5という解が求められた。つまり、このプロジェクトは、1.5倍の効果をもたらす。100円が、150円になっていく。つまり、経済が拡大していく。もとの100円と150円を足し算すれば、250円だ。もちろん、これは投資金額を、消費性向の逆数で割ったらいいから、こういう計算もできる。

一見、100円を投資しただけのようだが、それは250円になっていく。150円分は拡大していく。これを調達にあてはめて考えてみたらどうだろう。あなたが100円を調達するということは、その下のサプライヤーが60円分をさらに下のサプライヤーから調達するということだ。そしてさらにその下のサプライヤーから36円分を調達することだ。あなたの発注は、大袈裟に言えば日本経済のパイを150円分拡大し、多大な恩恵をもたらした。

ムダな発注であったらどうか。もちろん結果は変わらない。ムダづかいであっても、その「支出した」という事実が経済の拡大を呼ぶ。個別のバイヤーとしては、もちろん支出は最小限に抑えたい。ただ、逆説的ながら、みんなが支出を抑えずに、ばんばん使いまくっている状態のほうが経済が拡大していく。

だから、公共調達においても、ムダなお金をばんばん使ったほうがいい。外郭団体経由でこれまでのようにお金をばらまけ。と、私はそのような主張をしたいわけではない。ただ、申し上げたいのは、マクロ的に考えるのであれば、直接的に民間に投資することが必ずしも経済効果に優れているわけではない、ということだ。

衒学的になってしまってすまない。ただ、次は具体的にこの話を民間の調達の話ともつなげて述べていきたい。

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