調達・購買部門分割論(坂口孝則)

・購買部分割論

バイヤーにはやる気がないのか。

このメルマガを購読なさっている人にはあてはまらないでしょう。しかし、このメルマガを購読なさっている人であれば、「まわりのやる気のない人をいかに動かすか」については悩んだことがあるはずです。どうすれば良いのでしょうか。

バイヤーは受動的な仕事ばかり。しかも競争もないので、やる気も起きない。スキルを磨くこともない……。このようなことが多々いわれてきました。

ちょっと空想的かもしれませんが、私が考えていることが一つあります。

それは「購買部を分割すること」です。笑われたでしょうか。でも、説明を加えますね。

バイヤーのやる気がない理由を考えてみます。バイヤーは、「真面目にやっても報われない」という感を抱きがちです。それに業務がタコツボ化しているということもあるでしょう。

営業マンであれば「売る」ということが仕事です。ただ、別にある特定の会社に売れなくても良いので、売るということは「WANT」になります。しかし、バイヤーは必ず「買う」ことをせねばなりません。気にくわないから調達品を買わないという選択はありえないのです。だから買うということは「MUST」になります。

それが購買部を分割した企業にあってはどうなるでしょうか。分割した購買部では、このようなことを実施します。購買部Aと購買部Bができるわけです。

1.年に一度、設計部門に向けて「自調達部門の戦略」をプレゼンテーションします。そして、設計部門はどちらの購買部門に、1年間の業務を依頼するかを決定するのです。

これは盛り上がるでしょうね。それぞれの部長が真剣になって、若手を鼓舞することになるでしょう。それぞれの部品の戦略をめちゃくちゃ真面目に考えるでしょう。これまでは自部門で完結していた戦略が、他部門の評価を受けることになるのです。しかも、もうひとつの購買部と対決しますから、本気度が変わってきます。

そうなると、スター・バイヤーも生まれやすくなるでしょうね。「アイツがいるのであれば、こっちの購買部にお願いしよう」なんてね。これまで隠蔽されていた「バイヤー格差」が明らかになる可能性もあります。ワクワクする人もいるでしょうし、ワクワクできない人もいるかもしれません。しかし、健全な競争が人々を育てるのは、これまでの歴史が証明していることです。

2.設計部門から選択されること、が部門評価の大きな軸になれば、調達・購買部門にも「サービスを提供する」という意識が芽生えるでしょう。

トップ営業なんていうのもあるかもしれません。この購買部長はあそこの設計部門には顔が広いから仕事をとってきたな、なんて。バイヤーにもプレゼンテーション能力が必要とされるに違いありません。こういうことをいうと、「そんなことをすると、設計部門にこびへつらう調達・購買部員ばかりになるのではないか」と反論する人がいます。しかし、そうはならないと私は断言しましょう。

私は「調達・購買私塾」というのをやっています。そこでは講師陣を評価するのは、お客さんです。講義を聞きにきてくれたみなさまが「どの講師が一番良かったか」を投票します。当初は「そんなことをすると、客に媚を売る講師が人気になるに違いない」という意見がありました。しかし、実際はそんなことにはなっていません。媚を売っても、結局は講義内容が素晴らしい講師に票が集中します。それくらいの常識は、誰にだってあるのですよ。

・購買部分割論にあたって

さて、購買部分割にあたっては次のようなルールが必要になるでしょう。

1.依頼されたものは断ってはいけない。設計部門から依頼された品目や製品の調達を断ってはいけません。どんな細かな部品であっても、依頼されたものは断ってはいけません。

2.どちらかの購買部Aに人気が集中してしまったら、もう一方の購買部Bのバイヤーに、購買部Aからアウトソーシングを依頼することは可能です。ただその際は、購買部Bのバイヤーは、購買部Aの戦略に従わなければいけません。

3.サプライヤーの管理業務や毎期のコスト低減は、両部門が共同で行うこととします。個別のサプライヤー戦略については、購買部AとBで異なる場合がありますが、それは設計部門からより多くの票を入手した部門のものを採用することとします。

また、どちらかの購買部に一方的な偏りがある場合は、期間を区切り、強制的に再編成が行われます。力が均等化するように、再分割されるわけです。そのように繰り返すことによって、終りなき購買部の実力向上が図られます。

自民党にはさまざまな批判がありますが、批判のうち「あれだけ考えが違う人間が派閥を作っているのに、なぜ同じ自民党にいるのだ」というものがありますよね。でも、私はその批判は「違う」と思うのです。むしろ、自民党を強くしてきたのは、派閥間の争いであり、どちらかを超えようとする「情熱(権力闘争と呼ぶ人もいます)」だったのではないかと思います。競争原理は、すべての成長原理でもありますよね。それを使わないのはもったいない。

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