バイヤー現場論(牧野直哉)

2.工場見学にて

原材料や部品を購入するバイヤーには、サプライヤの工場は現場の最前線です。近年、工場や生産ラインにこそ各企業の付加価値の源泉があるとの理由で、簡単に工場見学できない場合も多くなってきました。工場への立ち入りが許されても、見学コースを厳格に規定しているケースもあります。昨今の動向から判断し、工場見学が許されるのは、バイヤーにとって本当に貴重な機会です。写真撮影ができないといった工場見学時には何らかの制約があります。その場合は、見たこと聞いたことをメモに残し、最大限の情報入手に取り組みます。

①不良品の発生防止を低コストで実現しているかどうかを確認する

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バイヤーの工場見学は、サプライヤの固有な技術やノウハウの入手が目的ではありません。また、バイヤーの設備や工法に関する知識をひけらかす場でもありません。自社が希望する仕様や機能を兼ねそなえた購入品が、使用可能な品質を維持しているかどうかの確認が目的です。複合的な生産要素を組み合わせて最終的な製品となる場合、最終的な出荷検査で個々の生産要素に関する品質確保の確認をおこなうのは困難です。したがって一つ一つの生産工程で、後工程に不具合品を送らない仕組みがあるかどうか。工程ごとに作業が確実におこなわれたかどうかを確認するプロセスの有無をチェックします。具体的には、次の3つの整備状況を確認します。

(1)工程ごとに作業手順書が準備され、手順書通りに作業がおこなわれているかどうか(作業者が常に確認できるように掲示されているか)
(2)作業手順書通りにおこなわれたかを確認するチェックシートがあるかどうか
(3)作業者と確認者が別にいるかどうか

作業手順書は、サプライヤのノウハウが明文化され、継承されていく最低条件です。作業手順書によって、生産にまつわるノウハウが企業内で共有化されます。また、作業が確実に実行されたかどうかを、作業者と、作業者以外の第三者が確認する仕組みは、不具合を後工程に流出させない歯止め効果が期待できます。

②工場見学は「生産フローの順番で」とお願いしてみる

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顧客の受け入れに慣れているサプライヤなら、工場見学のコースがあらかじめ決まっている場合もあるでしょう。工場全体を掌握するなら、あらかじめサプライヤが設定したコースでも構いません。しかしできれば自社で購入する製品の生産フロー順の工場案内をお願いしてみます。工場見学の起点は、サプライヤが購入する原材料や部品の受け入れ場所や倉庫になります。その場で、生産現場へ購入品の払い出しの仕組みから確認をスタートさせます。どのようなプロセスを経ているか。各プロセスでの確認は的確か。製品とともに、製品の品質が完成とともに確保されるかを確認して、バイヤーの生産プロセス理解を深めます。

生産フロー順の工場見学が受け入れられたら、見学順は必ずメモします。最近では生産現場の写真撮影は断られるケースが多いので、どんな現場名称で、どんな作業をおこなっていたかを記録に残します。後日問題が発生した場合、サプライヤの社内で発生した場合は、具体的に問題が発生したプロセスがイメージしやすくなります。

確認の結果、工場のおおまかなレイアウトとともに、上図のようなメモを残します。これは、筆者があるサプライヤを訪問して作成しました。このサプライヤの場合、いったり来たりの導線によって生産していました。部品が同じプロセスを複数回経由するだけでなく、工場規模に対して、製品完成までの移動距離が長いと判断しました。このサプライヤは、後日工場を新設し、こういった複雑なプロセスをシンプルかつ一方向の移動に改善しました。

③必ず指摘する

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工場見学の後、講評やコメントを求められる場合があります。現在製造業のバイヤーでも、その多くは事務系の社員が担っています。そこで「ものづくりはわからない」とコメントを諦めるか、何とかコメントするかで、サプライヤにとって手ごわいバイヤーかどうかが決まります。

といっても、生産工程を見てコメントするのは、簡単ではありません。するどい指摘をすればするほどに、手ごわいバイヤーとみられますが、いきなりそういった指摘をおこなうのは難しいのも事実です。そういった場合、自社の工場ではどういった管理をおこなっているのか。製造業に勤務しているは、まず自社の工場の管理状況の理解からスタートします。自社工場で、サプライヤから購入する製品がどのように使用されるのかを確認し、サプライヤ訪問に臨みます。使用方法や、組み立て/取りつけ方法をサプライヤの皆さんにお伝えするのも、重要な役割です。

また、もっとも指摘しやすいポイントは5Sです。現場の床にゴミが落ちていなかったかどうかや、現場の設備や工具の整理整頓状況は、バイヤーとしてもまず確認すべきポイントです。最近では、YouTubeに生産工程のビデオが多数投稿されています。訪問するサプライヤの工程でなくても、自分が購入している製品が、どんなプロセスで完成するのかを理解するには大きな手掛かりになります。ビデオの内容をメモして、大きく異なっている点があれば質問します。原材料や部品の受け入れ状況や、払い出し状況、各工程における確認行為について、もう一度説明を求める形でも構いません。どんな内容であれ、何らかの発言をおこないます。それが、時間を割いて工場を案内してくださったサプライヤの皆さんへの礼儀と心得ます。

ただ漫然と工場見学するだけでは、なかなかコメントや質問も出にくいかもしれません。そういった場合は、自分が確認する基準として「工場見学時のチェックシート」を準備して、みるべきポイントをあらかじめ準備しておきます。

<つづく>

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