To Doリストの使い方(牧野直哉)

今回は、読者からいただいた御質問に回答します。

【御質問】
文房具でも、スマートフォンのアプリでも、いろいろなTo Doリストが売られています。私もいろいろ試しましたが、結局面倒臭くなって使うのを止めてしまいます。牧野さんは、To Doリストを使っていますか。もし使っていたら、どんなツールかと使用方法を教えてください。

【御回答】
結論から言えば、使っています。特別なメモ形式のTo Doリストやアプリは使っていません。現在勤務先で使用しているOutlookのスケジュール機能に書きこんでいます。

そしてやることをすべて書きこんでいません。To Doリストに書き込む手間と、対応に要する時間を合わせ考えて、今すぐにやった方が良い場合は、すぐにやります。To Doリストに書き込む時間ももったいないと感じるためです。問題は、今すぐに取り掛かれない仕事、そしてすぐには終えられない仕事です。例えば今、過去に発注した経験のない仕事を外注化するプロジェクトのリーダーをしています。自分だけでなく、関連部門と一緒に進めなければなりません。私も含めて、プロジェクトの参加メンバーもすべて兼任です。メンバーの他の業務を含めた負荷状況をみながら、ターゲットと決めた期日までに発注を完了させなければなりません。

この場合は、完了予定日から逆算したTo Doリストをスケジュールに登録します。今週はこの手順書を完成させるといった内容で登録します。自分に作業が必要な場合は、「自分へのアポ」として必要な時間も合わせて登録します。最終的なゴールは発注ですが、発注に必要な構成要素に分割して、分割した各要素にも締め切りを設定し、スケジュールに登録します。テーマ、課題をできるだけ「単純化」します。単純化すれば、成果も苦労が少なく出せる可能性が高くなります。

スケジュールに登録するメリットは、一日に何度も確認し必ず見て忘れない点です。また、リスケジュールもクリック&ドラッグでできます。手軽なのです。本体は、サプライヤの面談や、会議のスケジュール管理が目的ですが、To Doには時間が必要ですよね。またどんな仕事にも、必ず締め切りがありますよね。締め切りを書いておけば、パソコンでもスマートフォンでも同じ画面で確認ができます。見る場所、管理するツールが少ないのも私が感じる大きなメリットです。

過去はいろいろなTo Doリストを使っていました。でも、そもそもTo Doリストを管理するのも面倒だと感じました。To Doリスト活用の効果として、書きこんで終了した後におこなう「チェック(✔)」が達成感だといった記事や文献を多く読みました。しかし私には、あまり達成感がありません。To Doリストを使っていると、どうしても始められない仕事が残ってしまうのです。仕事を進めるには、残っている仕事を管理するよりも、すぐに取り掛かれる状態の創出が効果的でした。すぐやった結果、手が着かなかった仕事でも、実際にやってみると、比較的短時間で終わる仕事も多いとわかりました。私にとって「一段落ついたらとりかかる」とか「落ち着いたらとりかかる」が、もっともダメな判断だったのです。自分だけで処理できない同僚やサプライヤと協力が必要な場合だけ、To Doリストより、スケジュール帳で進捗(しんちょく)を管理しています。

皆さんにお伝えする調達・購買のノウハウに関する記事でも、自分が仕事をする場合でも、最近強く意識している言葉が「そもそも」と「シンプル」です。今回のTo Doリスト活用の問題では、「そもそも」仕事が残るからTo Doリストが必要になる。だったら仕事が残らなければ、To Doリストが不要=よりシンプルになると考えました。

このテーマに関連して、最近読んだ本を御紹介します。Window95を作った中島聡さんの「なぜ、あなたの仕事は終わらないのか スピードは最強の武器である」には、仕事を終わらせるために必要な考え方と、具体的な実践論が紹介されています。日本とアメリカで働いた経験をもとに、日本人とアメリカ人の仕事に取り組み方の違いが書かれています。仕事のやり方には、日本とアメリカの文化的な背景が色濃く反映しているので、多くの日本人のやり方がダメで、アメリカ人の対応がすばらしいとは思いません。しかし、自分の仕事のやり方が、中島さんに映る日本人の典型に近かったのは、ちょっとショックでした。「ロケットスタート時間術」が紹介されていますが、自分自身でも、スタートに十分時間をかけた方が、成果の品質も高いし、納期も守れている場合が多い。そういった経験を教訓にして、今後の仕事に生かさなければならないと思っています。

<了>

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