ほんとうの調達・購買・資材理論(牧野直哉)

テキスト版 調達購買「私塾」50回突破記念講義
~サプライヤー情報を活用するためにまとめ会話に生かす「A4」作成法

去る9月某日、毎月最終金曜日に開催している調達購買「私塾」の50回突破念講義が開催されました。その時の講義をお伝えする第四回です。前回は、サプライヤー担当者との接触頻度を測定して、関係性の実態を理解する点をお伝えしました。ここで、Dのサプライヤーとの接触頻度の測定方法について、具体的な方法をお伝えします。

まず、フォームを利用して、接触の度に記入する方法。これは、A4の紙さえあれば接触の記録が残せるので、記録方法としてはもっとも簡単です。しかし、目的は記録でなく、接触回数の測定です。したがって、後々接触回数を測定しやすいやり方もお伝えします。

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まず、今回お伝えしているフォームに書かずに、接触のたびに自分宛にメールしてもデータの蓄積と事後の測定が可能です。メールの題名にだけ、次の事項を明記します。

「サプライヤー名 面談者名 要件 接触方法」

そして必要であれば、内容を本文に加えます。そして、一定期間経過後にメールソフトの検索機能を活用して、件数をカウントします。この自分へのメール送信は、日本語入力ソフト(IMEとかATOK)の「単語登録」を活用すれば、数十秒で完了します。これは普段自分が接しているツールをベースに編み出した方法です。メールであれば、パソコンからあるいはスマフォから発信できる方も多いでしょう。この方法は、接触の瞬間に可能で、そしてきるだけ「短時間」「簡単」「やりやすい」方法を模索した結果です。

また、最近ではICカードで来訪者の入出をチェックしている場合があります。そのログから、来訪者の入社/退社時間を確認して、バイヤー企業内にサプライヤーの担当者がどの程度滞在していたかがわかります。総務部門で管理しているデータで、必要目的を明確に知れば、抽出も可能な場合が多いと思います。

こういった例をお伝えするのは、今回皆様に提示しているフォームも、私が活用していた、あくまでもサンプルだとご理解いただきたいためです。ポイントは中身です。このA4は、記入してまとめるだけではダメです。日々サプライヤーとの関係性構築に、どのように活用するかです。続いて、活用方法をまとめます。

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このA4資料では、上部の現状確認と、下のリレーション確認を相互に関連づけて、バイヤーのサプライヤーへの対処に反映させます。

まず、上部、緑の部分のサプライヤーの現状確認です。ここでは、目標・課題と達成度合い、サプライヤー評価から問題・改善点から、ビジネス上のバイヤー企業にとってのサプライヤーの価値を測定して、自社事業への貢献度合いを表します。

つづいて下部、青い部分のリレーション確認です。ここでは、単純接触頻度と関係の面積から、関係の深度の見える化をおこなって、信頼関係の構築状況を可視化します。

バイヤーは、これら二つの要素に首尾一貫性を持たせ、バイヤーとしての発言と行動を一致させます。これが、このA4の目的で有り、サプライヤーとの関係を良好に継続させるためのツールとなるわけです。

このA4を活用する場面は、主にサプライヤーとの面談時と想定されます。その際のポイントもお伝えします。

まず、こういった紙の資料にした理由は、いつでも書き込める、携帯性にも優れている、そしてなによりも何度も見返す読み返せる点です。もし、さまざまなツールを活用して、パソコンやスマフォで同じ環境を構築できるのであれば、紙にこだわる必要はありません。ポイントは、サプライヤーの担当者との面談の前には目を通して、首尾一貫性を持った発言を心がける点です。

ここで、ぜひ心がけていただきたい点をお伝えします。まず、「話す」よりも「聞く」の重要性、質問力です。スライド一枚では語り尽くせませんが、バイヤーにとってもっとも重要なスキルである「質問力」について、このA4をどのように活用するかに触れたいと思います。

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理想のバイヤーが持つスキルとは、いったいどんなものでしょう。一般的には、ネゴシエーターといった口八丁、弁の立つ人を思われがちですが、実際は異なります。これまた一般論ですが、コミュニケーションは難しいといわれています。それは、話す能力よりも、正しく聞く能力に問題があるケースがほとんどです。また、皆さんが日々おこなっている交渉でも、弁舌の限りを尽くして相手を打ち負かす、言いくるめるよりも、注意深く聞いて、気持ちよくしゃべらせて、相手の発言を増やし、発言内容を活用する、あるいは内容の矛盾点を突く戦術の方が、有利な結果を得られる確率が高くなります。

サプライヤーとの面談でも、どれだけ自社に意味のある情報をサプライヤーから引き出せるか。これは、バイヤーがサプライヤーに投げかける質問によって決定します。質問の基点は(1)Aの左側と、(2)Bの右側です。現状から導き出した具体的な課題について①課題の存在を共有、②共同しておこなう取り組みに合意③取り組みの進捗をフォローしなければなりません。もし、現状で、バイヤー企業にとって好ましくない実績がある場合は、次の2つの質問をサプライヤーに問い続けなければなりません。例えば、こんな感じです。

① この結果って、同じような認識ですか?
② どうしましょうか?

このA4は、サプライヤーとのやり取りのあらゆる面での活用を想定しています。活用する機会が増えれば増えるほどに内容はより研ぎ澄まされてゆくのです。

続いて、首尾一貫性を維持するためのバイヤーとしての発言の統制と、意識付けです。実務ではさまざまな要求や依頼を社内外から受けると思います。もっとも困るのは、思いつきや、発言内容がコロコロ変わるケースではないでしょうか。他人がやっていて、自分がこまったなぁと思った場合は自分でもやらないようにします。もちろん、状況変化でこれまでの発言と異なる内容を伝えなければならない場面にも必ず遭遇します。そのような場合は、なぜこれまでの発言内容と違うのか、その根拠を明確にしなければなりません。そうやって、変化に適応しつつ、QCDDMを実現させたビジネスを通じた真の良い関係を構築するのです。

今回はサンプルを提示しましたが、ぜひ皆様のご勤務先のマネジメント方法に合わせた内容に沿ったフォームなり方法を独自に模索してください。

<おわり>

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