バカにつけるクスリ

「評価してくれたっていいじゃないですか!」

レベルの低い営業マンと付き合うのは精神的に良いものじゃない。

そのバイヤーは、また「ある人」に電話をすることになった。

「ある人」とは、取引額最大サプライヤーの営業マン。通常ならば、「電話など不要だ」と思っているそのバイヤーも、その営業マンには電話をする。

なぜ、その営業マンには電話をかけるのか?

メールをしても返事がない。

打ち合わせして、期限を決めても全く守られない。

こういう単純な理由からだった。

そのバイヤーは、毎回「あれはどうなりましたか?」とフォローを繰り返すばかり。しかも、そのほとんどが「今やっています」という回答しかもらえない。

ある案件のときのこと。

期限を絶対にズラすことのできない、用件があった。技術的な資料を、そのサプライヤーから開示してもらい、社内検討に入らねば開発日程が間に合わなかったのだ。

しかし、予想通り、その営業マンから期日に提出がない。

そのバイヤーは、その営業マンに電話をする。「期日が過ぎたのに、まだ提出されない。どうなっているのだ」と訊いたバイヤーへの答えが、これまた予想された通り「今やっています。今、準備しています」。

そのバイヤーは、「もう、分かった。全く進歩や改善が見られない。あなたの企業の事業部長に、あなたの酷さを伝えて、改善を申し入れる」と語った。

すると、その営業マンは、困り果てた声で、しかしどこか開き直る口調でこう言った。

「なんて、冷たいことを。信じられない。こんなに頑張っているのに、何も評価してくれないなんて!」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

仕事柄、色々な人に出会う。

色々な人に出会う、ということは困った人に出会う確率が高い。

その過程で良く分かったことは、「勤勉な無能者は、怠惰な無能者に劣る」ということだ。

大人同士が、期限を合意したにも拘わらず、その期限を破っても平気でいられる、ということは私の想像を超える。

よく、そういう人たちからは「こんなに頑張っているのに、なぜ分かってくれないのですか?」という言葉が発せられる。

期限が遅れているので、こちらからフォローすると、必ず「今、頑張ってやっています」とか「努力していますが、まだ完成しません」とか言われる。

この発言者たちは、自分が努力しているということに酔いしれて、他人との約束を破ったことへの自覚がまるでない。

そのことを責めると、「はい。遅れたことは知っています。しかし、ギリギリまで頑張ってみようと思いまして。それが誠意だと思いましたので」などと愚にもつかないことを言う。

他人に本当に誠意を見せるのであれば、「期限内に提出できない」と分かった瞬間に伝えてあげることだし、できるだけ早急に連絡することだ。

・・・・

「努力しているから」という免罪符で、期限を勝手に延ばしても良いと考える馬鹿者は、おそらく、「期限に間に合わなければ、代替案を考える」という当然の思考法すら身につけていない。

期限に間に合わないと思えば、バイヤーは社内調整ができる。

バイヤーは、他の簡易的手段で社内に説明をすることができるかもしれない。

しかし、それらも期限が過ぎて「提出できません」では対応できない。

おそらく、バイヤーにとって一番重要なのは、「サプライヤーに対して、期限というものの大切さを身に染みて理解させる」ことと、「それを他人に課すので、自分自身も絶対に期限を守る」ことではないか、と私は思う。

繰り返しだが、二十歳を超えた大人が、約束の期限を破っても平気でいられる、ということは私の想像を超える。ただ、期限に遅れる見込みが分かれば、連絡はすぐにしてやるべきだ。

バイヤー職も営業職も、特に難しいことは必要ない。

おそらく、みなが「期限を守る」「約束を守る」という基本的なことを実行するだけで、日本の生産性は30%は向上すると私は見ている。

LCC調達や、訳の分からない横文字を学ばせるのも良いが、それよりも小学校で学ぶような基本を学んだ方がずっと良い。

・・・・

こういうことを書くと、「あなたは努力を認めないのか」という人が必ず出てくる。

私は思う。「努力している姿だけを評価する組織よりも、結果だけを評価する組織の方がずっとまともである」と。

どんなに技術に明るくても、交渉力があっても、数字に強くても、期限や約束を守れないバカ営業やバカバイヤーは評価する気にはなれない。

私が、本を執筆するときに、「では、原稿は3週間後に」と約束して、本当に3週間後に提出したら驚かれた。

私にとっては、自己宣言であれ、一度約束したことを平気で破り、くだらない言い訳を繰り返す人の方が「驚き」である。

出版業界とは、有名な作家になるほど「原稿が遅れ」、「気分が乗らない」などという言い訳を繰り返し、だらだらすることが多いのだという。

そういうことが常識であれば、私はずっと、その常識に驚いていたいし、その常識には価値を見出さないつもりだ。

「バイヤーは、小学校教育を尊べ!!」

 

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