調達・購買感動塾

「泣いていましたよ!!」

人が泣くときは、悲しいときばかりじゃない。

そのバイヤーは、とある女性から電話をもらった。

取引先の女性だった。といっても、浮いた話じゃない。その女性は、とある営業マンのアシスタント女史だった。

その営業マンとは、バイヤーが最も「闘っていた」人だった。

その営業マンが無理なことばかり要求してくるわけじゃない。普通の営業マンであれば、すぐに納得してくれることにも、いちいち理由を聞いてくるのだ。答えるのが面倒くさかったのだった。

それに、なかなかしつこい。仕事はちゃんとやってくれるものの、何かあるたびに電話がかかってくるのだ。

「突然納期を早めろだなんて、何があったのだ?」

「今回の注文から5%安くしろとは、どういう魂胆だ?」

などということを、しつこく背景までをバイヤーに訊いてくる。

だから、その営業マンが定年を迎えるということを聞いた際には、正直ほっとしたものだ。

その営業マンの定年後、アシスタントをしていた女史がバイヤーにどんな用事があるというのか。

その女史は言う。「昨日あの人(営業マン)の送別会だったんだけどねえ、なんだかねえ、あなたのことを非常に気にいってたみたいで」と

そのバイヤーにとってみれば、何をした記憶も無い。

女史は続ける。「むかし、何かのお礼にハガキをいただいたでしょう。それに感激したようで、ずっと保管しているみたい」と。

バイヤーは思い出す。

そういえば、ものすごく困難な納期調整を、その営業マンがやってくれたときにハガキでお礼を出したことがあったっけ。侃々諤々の議論を交わしたけれど、なんとかやってくれたあの人。

電話だけではお礼を伝え切れなくて、そっと手紙を出していた。

思いにふけるバイヤーに対して、女史は言う。

「だからね、あの人ったら、思い出して泣いていましたよ」

・・・・

そのバイヤーは私だった。

これまであまり書いたことのなかったテーマについて話してみよう。

それは、いかにサプライヤーと接するか、あるいはサプライヤーに「動いてもらうか」ということだ。

前回の号で、私が「うじうじ悩むのがバイヤーだ」とネガティブシンキングを述べたところ、意外に好評だった。

だから、私の意外な面を引き続き書いてみよう。

まず、私はモノを「買う」という立場にどうもなじめなかった。

なぜ、偉そうにできるのか、単に会社の金で製品を買っているだけで、という根源的な疑問を周囲のバイヤーに抱いていた。

営業マンのための本を読んでいると、「お客様には手書きのお礼状を書くと良い」と書かれていた。

それを見た私は、工場見学に行った後、営業所を訪問した後に、ずっと お礼状を営業マンに書いていた。

相手と自分の立ち場がどうであれ、こちらに親切にしてくれたり、こちらにためになることを教えてくれたりした場合は、礼を尽くすのが当然だと考えるからだ。

買い手と売り手の関係など。「そんなの関係ねえ」だ。

手紙を出したときの反応は面白い。

「お客から手書きの礼状などもらったことは、初めてだ」とよく いわれた。

気のせいかもしれないが、そういうことをずっと続けているとこちらへの対応も良くなった。

今でも手書きの礼状は続けている。

・・・・

ただ、その手書き文章に対しての返信は、手書きだったことはほとんどない(だから「ほしい」と言っているわけではない。むしろ、再返信などご無用である)。

とはいえ、メールなど何らかの再返信はもらえるときが多い。

もちろん、バイヤーがお礼状程度で、サプライヤーの心を動かそうとすることはむなしい。

それは単に自分が気持ちよくなるための手段として使うのがよい。

それでもなお、お礼状を通常は出さない立場の人が率先して出すというのはかなり意外性が有ってよいものだ、と誰かから言われた。

仕事をする理由は、「お金」と「他者からの『ありがとう』」のためだ、と私は思う。

「お金なんてどうでも良い」という人は信じてはいけない。

「では、0円でも今の仕事をやるのか」と訊けばほとんどの人は口ごもるからだ。

「それは極論だ」という人もいるが、なぜ極論だったらダメなのかをちゃんと教えてくれた人はいない。

私はよく、「お金なんてどうでも良い」と言う人ほど金にうるさい、という話をする。本当に金にこだわっていないのであれば、そんなことを口に出すはずもないからだ。

私はバイヤーという金にまつわる仕事をしているのだから、日ごろから金にこだわるのは当然だと思うのだが、どうだろうか。

ちなみに、「人間って外見じゃなくて、中身だよな」と言う人に対して、「そういう奴に限って、中身もたいしたことないんだよな」と言うと、二度と口をきいてくれなくなるから注意が必要である。

・・・・

話を戻そう。

そんなことはどうでも良かった。

仕事をする理由は、「お金」と「他者からの『ありがとう』」のためだ、という話だ。

私は思う。「バイヤーは、サプライヤーに対して、たくさんのお金をあげることができないから、せめてサプライヤーに『ありがとう』と心から言ってやれ」と。

何か教えてもらったら、「ありがとう」

何か手助けしてもらったら、「ありがとう」

無理をきいてもらったら、「ありがとう」

金だけでつながっている関係ではない、と信じるのであればなおさらのこと、この一言が大事だと思う。

そして、お互いに「ありがとう」と言い合えない関係ほど、むなしいものはないとも思う。

最初は、「ありがとう」なんて心から言わなくってもいい。

言っているうちに、きっと心から言ってしまえるようになるから。

こんなこと、道徳教育みたいでいやだ。

ただ、私は「優秀だ」とされるバイヤーが、直に接してみると傍若無人で人間的に「なっていない」ことが分かるたびに思う。「この人のようにはならないぞ」と。

周りと仕事の喜びを共有できないで、どこに感動があるというのか。

調達・購買感動塾は、そこから始まる。

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