構造と調達力(このジョークは何人に通じるのか)

「誰が決めたんだよっ!!」

上司の机の前に立たされるのは、誰だって気持ちの良いものじゃない。

それが1時間近くだったらなおさらだ。

説教は5分間を超すと逆効果にしかなりえないな、とその説教を聞いていたバイヤーは思った。

しかし、説教をする側にも論理はある。

部下が勝手に1億円もの発注を独断で決定したのだから怒る権利はある。多分。

「なんで、そんなこと決めてから報告するんだよっ。承認ルートがあるだろう」と上司は止まらない。

説教を聞きながら、最初の3秒間は反省したバイヤーだったが、4秒後には自分が正しいと思い直したので、受け流すしかなかった。

「こういうのは勝手に決めるんじゃないぞ。ちゃんと、書類を提出して、合意のもとで決定するんだ」とまだ上司は言っている。

そうではない--、とそのバイヤーは思った。

承認ルートや、細かな社内規定など知っている。知っているからこそ、事前に相談もした。

しかし--。結論が出なかった。部署の誰に相談しても。

「まあ、もうちょっと考えた方がいいんじゃない?」とか「もうちょっと細かな情報があったら良いね」とかばかり。

だから、そのバイヤーは上司に言った。

「いや。誰も決めることのできない人たちですから、私が決めたまでのことですよ」。

失敗--。失言とは、言った後に判明する。その一言を聞いて上司はさらに怒り出した。

「お前が決めたって!お前が一人で決められるっているルールは、誰が決めたんだよっっっ!」。

・・・・

そのバイヤーは私だった。

その前に、少しだけ背景を話しておかねばならない。

A社とB社があった。それまでは、ある部品を継続的にA社から調達していた。あるとき大型案件があり、A社だけとの交渉では上手くいかないと予想し、競合でB社を参入させた。

A社はもともと付き合いがあったことから、価格的には優位だろう、と思っていた。が、結果はB社が圧倒的に安かった。品質も問題なさそうであったし、技術的にも遜色はなかった。

競合をやる以上、結果を尊重せねばならぬ。

当然そう思った私は、B社よりの姿勢で発注先を決めようと社内をまわっていた。

すると、なかなか社内から良い返事がもらえない。いや、設計陣はむしろ好意的反応だ。むしろ、自部門(調達部門)から、否定的な言葉が相次いでいた。

「もうちょっと考えろ」

「影響が大きいんじゃないか?A社にしておけば?」

「なんともいえないなあ」

「別に無理にサプライヤーを替えることないんじゃないの?」

とかそういうことばかりだ。

そこで、もう相談しても意味がないと思ったので。B社で決断し、結果だけを自部門以外の関係者に連絡してまわった。そしてB社にも連絡した。

というところで、冒頭のエピソードに戻っていく。

おそらく私が自部門の相談を切ったおかげで、関係者はおそろしく時間が浮いたはずだ。「ああ、なるほど。仕事を早く速くしようと思えば、自部門に相談しなければ良いのだ」と学んだ。

決断力を欠いた人たちと会議をすることの利点とは、暇人に時間をつぶさせることと、会議のときに買ってくる缶コーヒー業者を儲けさせる以外のことは、今のところ世界的に発見されていない。

・・・・

判断力と決断力は違う。

A社が良いかB社が良いか、とすら判断できない人は問題外。B社が良いだろうと判断できる人は、かなりいる。

しかし、そのB社が良いだろうという判断をした後に、決断し実行できる人はそうはいない。

前述の場合で言えば、なんとなくみんなB社が良いだろう、ということは分かっていても、本当にこれまでのA社を切ることが決断できない。

ゆえに、会社はエクセルで作られた無意味な細部資料ばかりが溜まっていく。そんな資料ばかりで決断できるはずがないのだ。

判断だけでは物事を動かせない。

もちろん、正しい決断の伴わない決断だけでは、失敗するだけだ。

判断力だけが勝っている人を「評論家」と呼び、決断力だけが勝っている人を「無謀家」と呼ぶ。

どちらもバランスが必要だ。

しかし、それにしても判断だけが勝っているよりも、決断だけが勝っている方が、まだマシだと、私は思う。

・・・・

自分では決断できないくせに、誰かが決断したあとに苦情ばかり言う人が多い。

こういう話をすると、「そうなんだよねえ」と皆賛同してくれるが、その賛同してくれる人の多くがそうなのだから問題は根深い。

決断力を欠いた集団を見放し、自分で行動している人が成功するとジェラシーで陰口を叩き、失敗すれば「やっぱりな」と笑う。

傑作「ヒューマン2.0―web新時代の働き方(かもしれない)」では日本を飛び出してシリコンバレーで働く人々のつらくも明るい姿が描かれている。

自分で決断し生きている人はかっこいい。

ここに理屈はない。

たとえ1時間怒られてもいいじゃないか、とあえて調達の本質をズラしたところで結論づけておく。

「バイヤーは、上司の机の前に立て!!」

 

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