ときには真面目な、購買道

「俺には時間がないんだ!」

人生を変えようと思ったら、簡単にできることがある。

そのバイヤーは人よりも速く仕事をこなすことに快感を覚えていた。

誰よりも速く仕事をすれば、次の仕事ができる。

次の仕事をすれば、空き時間に自分の好きなことができる。

例えば、新規商品開発のとき。あるバイヤーが交渉に3時間かかっていることを、1時間で済ませば、2時間は自由に使えるではないか。

しかし、周りを見渡せば、自分の仕事を効率化しようとするどころか、営業マンと無駄な打ち合わせを繰り返し、その多忙さ自体に自己陶酔しようとしているバイヤーたちがいた。

ある日のこと。

そのバイヤーは引継ぎを行おうとしていた。引継ぎ元は、あと10日で違う事業所に転勤してしまうバイヤー。

引継ぎ資料があったか。ない。

引継ぎの価格表等があったか。ない。

引き継ぐ仕事に対して、どのようなことを注意すべきなのか。あるいはどのようなことに関心を持つべきか。そのような伝達があったか。ない。

あまりに「酷い」と思ったバイヤーは、その引継ぎ元のバイヤーに対して申し入れた。

「もっと、ちゃんとやって下さい(先輩だったので、言葉遣いが丁寧だった)」

すると、それを聞いた引継ぎ元のバイヤーはこう言った。

「そんな資料作れるか!俺には時間がないんだ!」

つまり、解決せねばならない問題ばかりで引継ぎに時間がかけられないということだった。

・・・・

その引継ぎ先のバイヤーは私だった。

自分の仕事の状況を日ごろから、資料化していないバイヤーが優秀なはずはないが、そのことはとりあえず置いておこう。

そういう話ではない。

そのバイヤーはあと10日もあるのに、「忙しくて引継ぎ資料など作っていられない」と言った。

10日間もあるのだ。

おそらく、10日間もあれば本が一冊書けるし、アメリカ往復5回くらいはできる。

よく無能な人が「あんまり時間がないからなあ」と言うけれど、その「あんまりない」はずの時間はスピード狂の人からすれば、膨大な時間であることがほとんどだ。

何をそんなに時間がかかると言うのだろう。

自分が考える時間か?

あるいは、ママに相談する時間がかかっているのかにゃ。

そんな皮肉は良い。せめて、この文章を読んでいる人と、「いかに仕事を速く、早くこなすか」ということを共有したいのだ。

・・・・

仕事がやたらに時間がかかって「忙しい」と思っている人に勧めたいことがある。

それは、「自分がやっていることを、15分単位で記録する」ということだ。

自分は朝から15分単位で一体何をしたのか?

自分はどんなことに時間を使っているのか?

それは、自分が会社の経営者だったとしても価値を認めることか?

現在、某岡田オタキングが「レコーディングダイエット」というものを提唱している。

これは、自分が食べたものを「記録するだけ」で痩せることができる、というものだ。

これは、バイヤー業にとっても同じことだと思う。

バイヤーが「忙しい」というとき、何に時間をとられているか分かっていないことがほとんどだ。

自分の行動をつぶさに記録すること。

そして、自分が本当にその日にやるべきことをメモして、朝15分だけでも良いのでじっと眺める(この「単にじっと眺める」ということが大切だ)。

それだけで、自分の仕事の効率が相当上がる、ということを信じてくれるだろうか。

おそらく信じてくれないだろう。だから、一部の信じてくれた人だけが、仕事の速さを教授できるオイシイ目にあうのだ。

・・・・

一つだけ確かなことがある。

それは、どんな人にも「将来は時速60分でやってくる」ということだ。

時間は金なり、と言った人がいるけれど、どう考えても時間は金よりも尊い。

一つのことを成し遂げようとしたときに、ある人は120分かかる。だけど、違う人は60分で終えることができる。

バイヤーという仕事は適当にやっても、周囲が勝手にフォローしてくれるから、こういう時間感覚を麻痺させた人も生き残ることができるかなり良い(もちろんこれは皮肉である)業務である。

誰もが、自分の仕事の時間分析をしない(工程作業では、当然なのに)。

誰もが、自分の時間当たり生産性を向上させようとしない(工程作業では、当然なのに)。

これに加えて、誰も日々本を読んで勉強しない。だから、私は「これからバイヤーになる人は良いなあ。誰も勉強していないから、本を数冊読めば、すぐに先輩を超えることができるよ」と言っている。

冗談ではないのだ。

明日からペンを取れ。

そして、日々の作業の時間短縮を図れ。

それが、いかに周囲から見てミステリィでも。

タイムリィに。

ドリーミィに。

「バイヤーは、午前中に仕事を終えろ!」

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