今日、明日、ところで調達・購買

そのバイヤーは私だった。

と今回は突然書いておこう。

どうも最近はうまくいかないことばかりだ。

思いもせぬトラブル。そして、思わぬ値上げ依頼。とめどもない言い争い。社内からの議論のふっかけ。品質に関する大騒ぎ。

このバイヤーという職業は、トラブル処理が中心になりがちで、人を飽きさせないのに十分らしい。

そんな最中に、私の4冊目の「調達・購買実践塾」が発売されることになった。

実は、結構感慨深い本である。

1冊目を出したときに、「たいていの作者は1作目を出すときに、力を使い果たすから、それ以上は書けない」と言われた。2冊目を出したときには、「3冊目までは悩めば書ける。でも、それ以上書ける人はほとんどいない」と言われた。

だから、4冊目は結構、感慨深かった。

その発言主は、出版社の人だったり、一般のビジネスマンだったりした。その発言を打ち消してやろうと思って執念に燃えるほどの性格ではないが、書き上げたあとになぜだか「ほっと」したことを覚えている。

よく思えば、バイヤーとしての私は、批判され、怒られ、打ちのめされるばかりで、自分への無力感がずっと身を包んでいた。

私の文章を読んで、「苦労した話や、失敗した話ばかりですね」とよく言われるが、実はそんな経験しかしたことがない、ということにすぎない。

そして、そんな失敗ばかりの中で、悩みながら日々を重ねていくのが立派なバイヤーだと思う。

一人で悩んで、怒られっぱなしで、いつまでも落ち込んでいるバイヤーを見るたびに、私は「そのままでいいよ」と逆説的に励ましたくなってくる。

・・・・

私は「よくそんなにたくさんの文章が書けますね」とも言われるが、それは鬼のような上司から出張報告を山のように出すことを強制させられて、たくさん書くテクニックをいやいや身につけた結果にすぎない。

多量の文章を書かねば、ネチネチ小言を浴び、精神的におかしくなりそうだったから、そうせざるを得なかっただけだった。

またある人は、「いつも発言が的を射ていますね」とも言ってくれるが、それも会議のとき周囲の先輩バイヤーにいじめられて、「発言しない奴は出て行け」と言われ外で2時間くらい立たされた経験を何回も持っているからにすぎない。

さらに、無理して何か話そうと思ったら、「お前が言いたいことが分からないから、二度と話すな」とも言われた。

中卒の先輩からは、「大卒ってバカなんだなあ」としみじみ言われ、真顔で「お前は小学校に行ったのかにゃ」と聞かれたので、それ以降は社会人でも勉強を続けようと誓った。

そんな感じで、私が今身につけているものは、全く自慢できるものではない。

それらは、モチベーションなどというものを源泉とせず、単にネガティブな要因があったので身につけざるを得なかったと言っても良い。

・・・・

私のことを「優秀だねえ」と誤解してくれる人がいるが、それは全く違う。

私が、もし飛び込みの営業マンだったら、絶対に何も売れなかっただろう。間違いなく失敗して、自殺でもしていたかもしれない。

あんなに、何度も断られて、それでも次の客に飛んでいけるなんて信じられない。

私のことをよく知っている人は、「そんな些細なことに悩みむなよ」とよく私に言う。

そう、よく私は人から言われたことを気にする。人の仕草を気にする。本を買ってくれた読者から言われたことをいつまでも気にしている。

「ああ、なんでこの人はこんなことを言うのかなあ」とウジウジ悩んでいる。

自分のことであっても、仕事の約束の期限が近づいてくれば、「早く仕事を終わらせなきゃ」と半狂乱になるし、仕事の成果が出ないとずっとずっと眠れない。

だから、「そんな些細なことに悩みむなよ」とよく言われる。

だけど、なかなかこの性格が良いな、とも思えてきた。

サプライヤーからは、「よくこちらの言ったことを覚えてくれていますね」と驚かれる。あまりにも私のチェックが細かいので、サプライヤーからも呆れられる。それなりの業績を残せているのも、そのせいだろう。

出版社からも、「これほどちゃんと期限を前倒ししてくれる人はいない」とまで言ってくれるし、「こちらの要望をよく理解してくれる」と言われるのも、指摘されたところをずっとずっと思い悩んでいた結果だ。

私はどうも、「無理して明るく生きよう」という言葉に偽善を感じてきた。明るく生きることが素直にできるのであれば問題ないが、無理に明るくしようとすることこそ「弱者」ではないか。

だから、バイヤーよ。落ち込むときには絶望の淵まで落ち込もう。それがバイヤーだ、人間だ、と思うからだ。

「調達・購買実践塾」とは、単なる塾ではない。

超凡人の、おちこぼれの、どうしようもないほど「使えなかった」バイヤーが語る、バイヤーのための、重苦脱出のための、拾句なのだ。

もう一部のネット書店では品切れになったようだが、読者がそのメッセージをつかんでくれると、嬉しい。かなり。

「バイヤーは、最悪からはじめよう!」

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