社内関連部門に眠る「何か」を引き出す方法(牧野直哉)

上流購買とは、言い方を変えれば開発購買やVA/VE活動、トータルコストダウン活動や原価企画といった内容も含まれます。具体的な購買内容を決定するプロセスに調達・購買部門が関与することによって、実現性が難しい購入要求を作らせない、実現可能であったとしても、有利な購買ができないような要求内容を回避する取り組みと捉えています。

だったら「開発購買」と言えばいいじゃないか、と御指摘を受けそうですね。あえて「上流購買」としているのは、購入条件は仕様だけじゃない。上流で決定される「仕様」だけに関与していれば、現在調達・購買の現場で難題に苦しむバイヤのみなさんの解決策が提示できないとの問題意識からです。

例えば、ここ数年間バイヤのみなさんを苦しめている購入品の値上げ対応。値上げの抑制について、根本的に仕様から見直すといった取り組みも有効です。しかし多くのバイヤのみなさんは既に決まった仕様のもとでサプライヤから値上げを要求され、その値上げ幅の妥当性確認を苦心して行われています。この問題に開発購買的な取り組みは、即効性がないと考えています。ここは気をつけて表現しますが、全般的な効果がないと言っているのではありません。開発購買に時間を要していると「値上げしてくれないなら納入を止めます」と言わせるための時間を積み上げていることにならないか。今すぐにでも値上げをしてほしいと思っているサプライヤに対して開発購買は、なかなか効果的な解決策を見い出せないと考えているのです。

でも私は調達・購買部門が社内プロセスの上流に関与する意義は確実にあると考えています。ポイントは「どの部門に関与していくのか」です。社内関連部門から購入要求を受け発注するにしても、購入要求内容に関与する上流部門は設計・技術部門だけではありません。営業部門や生産管理、製造部門といったあらゆる部門が関与しています。

もう一つ、例え話をします。ここ数年多くの調達・購買部門を苦しめてきた半導体不足問題。今年の半ばぐらいから半導体業界におけるサプライチェーンの上流では、投資が見送られたり、需給が緩んでいたりといった報道を見かけるようになりました。しかし実際調達・購買の現場では、不足感は緩和されていないと耳にします。こういう状況の中、限られた数量の中で自分たちへの供給量をどうやって増やすのかがテーマになります。サプライヤに対して「供給量を増やしてほしい」と言うのは簡単ですね。なぜ増やしてほしいのか、増やしたことによってバイヤ企業からサプライヤに提供できる価値やメリットを語れるかどうかが、供給量を決定するサプライヤの意思決定の分水領になるのではと考えています。

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