「2021年度後半コストダウンは不要です!」と言ってみませんか?

先日、ある企業のサプライヤ会合で講演する機会がありました。新型コロナウイルス感染予防を目的にWebミーティング形式での開催。全社的な方針だけではなく、各営業部門の責任者に技術動向や需要見通しを直接サプライヤへ語る時間を設けるとても有意義な時間でした。バイヤは出席者の反応を見たり聞いたりできずフォローが必要ですが、今後につながるコンテンツ満載でした。

 

従来の取引先協力会では、企業戦略や方針、調達・購買戦略が説明され、宴席をもうけるケースが一般的。新型コロナウイルス流行によって、大人数が一堂に会する場や宴席は、感染予防の観点で開催しにくい状況です。多くの打ち合わせがリアル開催からWeb開催へ移行しているのと同じく、取引先説明会もWebミーティング化していることでしょう。リアルからWebへの移行で、より重要性が高まる点が2つあります。

 

1つは、サプライヤからみたとき顧客として「優位性」を示せるかどうかです。かつて勤務していた会社は大手企業が顧客でした。たくさんの顧客の新年度方針説明資料を参照して感じたのは、資料の中にある会社のロゴやコピーライト表示を消すと、はたしてどの企業の方針なのか?が全くわからない点です。各社の主張にほぼ違いがありません。コストは下げてほしい。品質は高めて、納期は短くしてほしい。そんなお願いばかりです。もちろんQCDの確保は調達・購買部門にとって重要な責務です。しかし言い換えれば「当たり前」です。当たり前の内容を、わざわざ交通費や移動時間コストを費やして聞かせるのも芸がないと思ったのです。

 

たとえば「QCDはいずれも重要です。そして中でも来年度は×××××を大きなテーマにして、お取引先の皆さまと一緒に活動してゆきたいと考えています」といった何らかの絞り込みが言えたら、これだけで他社との違いが明確化できます。また今の時代だったら「来年度はコストダウン0(ゼロ)で結構です」なんて言ったら、きっと出席者の印象に残るでしょうね。もちろん企業として目標利益達成をコストダウン以外の施策で実現する必要はありますし、取り組みにはサプライヤの協力が不可欠でしょう。でも「あぁ、また去年と同じこと言ってるな」とか「他の会社と言っていることかわらないね」と、その他大勢の中に埋没するリスクは避けられるはずです。

 

2つめは先行き需要に関する見通しです。大手企業では先行きの需要情報は提示するけれども、引き取り責任を負わないケースがあります。売り手と買い手の力関係で、そういった条件が成立する場合もあるでしょう。しかし責任の伴わない情報を誰が信じるでしょうか。事実そういった情報は、需要の見通しができないので「取りあえず」昨年度並みの数量を提示しているケースも多いのです。

 

今、日本でもやっと新型コロナウイルス感染予防を目的にしたワクチン接種が加速しています。対象者の接種が年内に完了するといったシナリオを想定すれば、これまで消費者の巣ごもりによって大きく減少していた需要が大きく拡大する可能性があります。新型コロナウイルス流行の影響は業種によって大きく異なりますし、変異株による影響は予断を許しません。しかし過去数年の実績と比較して今年度の見通しが減少しているなら、こんなストーリーの検討をサプライヤと共同しておこなってはいかがでしょうか。

 

「新型コロナウイルスワクチンの接種が順調に進み、2022年明け以降に景気が拡大、2021年度末へ向けて大幅増産の需要見通しが提示」

 

車が急に止まれないのと同じく、生産量を短期間のうちに大きく引き上げるのも難しくなっています。いきなり確定需要としてサプライヤへ提示をちゅうちょするのはわかります。でも例えば「生産数量を20%アップするために必要な準備期間は?」といった従来と異なる生産数変動対応に関する情報の入手はできるはずです。

 

2022年が明けたとき「2022年1-3月ではサプライヤ能力の奪い合いが発生、モノが入手できずに売上拡大、購入価格が大幅に上昇して利益拡大の2つの足を引っ張った」のが調達・購買部門なんて言われ方は避けたくありませんか?

 

取引先へ方針説明会をリアル開催からWeb開催へ変更する場合、従来以上にサプライヤの耳に届く内容の究め込みが必要です。2つの提案を実践するためには、説明会の前に社内でしっかりとした議論が必要です。コストダウンせずにどうやって利益目標を達成するのか。簡単ではないでしょう。議論の結果、新たな取り組みが見出せるかもしれません。リスクは負わない、わからないから去年と同じといった内容では、せっかくの説明会の形骸化が進むだけです。新型コロナウイルス流行収束まで、よりよいサプライヤとの関係を維持するためにも「QCDはいずれも重要です。中でも2021年度後半は×××××を大きなテーマにして、お取引先の皆さまと一緒に活動してゆきたいと考えています」の×××××部分に工夫を凝らした皆さま独自のお考えを示してみてください。

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