サプライヤからの反発(牧野直哉)

真剣に対応しようと考えているバイヤだからこそのお悩みです。

御質問:CSRやSDGsにまつわる顧客の調達方針が提示された場合、サプライヤにも周知すべきでしょうか?周知したとして、サプライヤから同意が得られない場合、どのように対処すべきでしょうか?

回答:まず、お客様から何らかの調達方針が示され、バイヤ企業として遵守する場合、サプライヤに対しても同様に提示して遵守が必要です。遵守されなかった場合、自社はもちろん、顧客まで累がおよぶリスクは絶対回避が必要です。調達・購買部門は、サプライヤが順守しているかどうかの確認をサプライヤ評価の一環として行わなければならないでしょう。

ここでサプライヤに同意してもらえない想定は、バイヤとしては想定したくない事態。でも必要な想定です。ではどのように対処すべきか。顧客要求事項であれば、バイヤ企業内へ周知する。従業員全員が理解し、内容を順守した事業活動が必要です。調達・購買部門として気になるのはサプライヤです。まず自社内で顧客要求への対処を盤石にします。

バイヤ企業内でも、顧客要求内容を理解し順守して事業活動を進めるのは、たくさんの困難が想定されます。多方面から「本当にそんなことしないといけないのか?」といった素朴な疑問が呈されるはずです。自社内の周知徹底のプロセスで呈された意見、必要となった対応は、サプライヤ社内でも同じように呈され、繰り返し対応する可能性が高い。そういった困難な状況に対して、バイヤ企業として謙虚に取り組んだ経緯は、サプライヤに理解を求める、内容を遵守して事業を進めてもらうために様々な示唆が得られるはずです。

重要なのは、顧客要求とはいえそのままの内容を右から左に流すだけでは実現されません。要求に実感が伴わないのです。ただ方針を示すだけでは、至る所で「こんな要求されても困るよなぁ」なんてぼやきの会話が交わされてしまいます。最悪、ぼやきがあっても社内の誰かが「でもやらないとダメだよね」と歯止めをかけられるかどうか。サプライヤとの関係では、バイヤが「言いたいことはわかるけど、何とかやっていこうよ」と言えるかどうかが重要なのです。

まず顧客の要求内容を、バイヤ企業内で確実に周知して全従業員が理解する。その過程でさまざまな議論をしましょう。要求内容に対する反発や異論を社内で経験しておくのです。そういった議論からは言葉だけが上滑りしない「行動」が生まれます。そしてサプライヤ対応にも役立つ示唆が得られるでしょう。そういった単なる言葉だけではない実感をベースにした発言や行動でサプライヤに示すことが、サプライヤからの反発を回避する数少ない施策といえるのです。

無料で最強の調達・購買教材を提供していますのでご覧ください

あわせて読みたい