サプライヤと関係を深める理由(牧野直哉)

先日あるセミナーで受講生から次のような御質問を頂き回答した内容です。

質問:なぜサプライヤと関係を深める必要があるのですか?

牧野からの回答:たくさんのサプライヤから購入可能で、サプライヤ同士が競争し切磋琢磨の結果、バイヤ企業にとってより良い購入条件を競って提示してくれる。そんなサプライヤだったら関係を深める必要はありません。バイヤは、たくさんのサプライヤが競争可能な環境を整えます。わかりやすい見積依頼書を作成したり、サプライヤに検討可能な見積提出のスケジュール管理をしたりといった競合管理を行います。

サプライヤ同士の競争が成立しない場合、「ここぞ!」と思うサプライヤと関係を深め、自社にとって都合の良い購入条件を引き出す取り組みが欠かせません。購入条件だけではなく、もっと広範囲な取り組みを模索します。

特定のサプライヤと関係を深めるためには、自社にとって取り引きする価値のあるサプライヤの選定が必要です。取引額の大きさだけでは不十分。取引額は過去に発注先を選定した結果です。共同開発といった未来の可能性を含める。近隣地域に所在するサプライヤで、依存度が高く自社でも将来にわたって活用するケースが該当します。

サプライヤと関係を深めるためには、どんなサプライヤが自社にとって意義あるのか「基準」を定めます。設定した基準に合致するサプライヤは、現在取り引きしているサプライヤの中にあるのか。サプライヤが存在しない場合は、新たなサプライヤ開拓が必要です。

サプライヤが選定できたら「関係を強化したい」と明言します。なぜかの「根拠」も必要です。根拠は自社の戦略や経営計画に見いだせるでしょう。サプライヤも同様にバイヤ企業との関係を深めたいと考えれば、売買だけの関係から踏み込んだ関係構築が可能です。

現在進行形の取り引きでは、購入条件についてより良い、他のバイヤ企業よりも好条件の提示を要求します。深い関係ではサプライヤの千三つ的な営業活動は不要です。双方の条件をクリアすれば、腹の探り合いなどしません。営業活動は最小限度に抑えられるのがサプライヤ側のメリットです。

バイヤ企業は、モノやサービスを購入するだけではありません。サプライヤの事業企画や技術開発といったリソースの活用を検討します。従来行われている共同開発だけはなく、バイヤ企業の策定した戦略を、サプライヤ視点で市場適合性があるかどうかを確認するのです。せっかく策定した戦略も、市場の方向性と異なっている場合、進める際の逆風は激しくなります。強い逆風に、伴って歩みを進められるサプライヤかどうか。限られたサプライヤと戦略を共有できれば、違った視点での情報や新たな考え方にも触れる機会が増えるはずです。

かつて、バイヤ企業の指示を忠実に守り実現すれば理想的なサプライヤと表された時代がありました。ビジネスパーソンでも「指示待ち」人材は避けられます。自分の軸や考えをもって、意見を戦わせる人こそ好ましく捉えられる時代です。言うことを聞くサプライヤよりも、建設的に問題点を指摘してより良い方向性を見いだす関係性こそ、理想的なサプライヤとの関係の深め方です。

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