一流の調達・購買担当者はモノだけではなく、情報を調達する(坂口孝則)
調達・購買担当者に重要なのは、新規製品や新規サプライヤを社内に紹介するだけではなく、情報を紹介しなければいけないことです。
これが、どういうことかわかりますか? これまでずっと情報購買と言われてきました。でも、情報購買とは何なのかわかってる人ほとんどいませんでした。情報購買とは、その文字通り、情報を社内の設計者に発信することです。
そういうと簡単なんですが、具体的に何をやればいいのか。それは、こう考えたらいいと思います。
何かの案件が出てくる。そのとに設計者が考えた製品の仕様書を受け取って、相見積りを取るだけの人。それは三流。
仕様書を受け取って、このサプライヤだったら安くできるよ、というのは二流。今ではこの仕様は古くなっていて、このサプライヤーがやっている技術を盛り込んだ方がいいよ、しかもそれでQCDその他が向上するよというのが一流です。
三流と一流の違いは、商品だけを扱っているか、情報も扱っているかの違いです。一流は情報と商品を同時に扱います。情報だけを伝えるのはなかなか難しいかもしれません。具体的な案件がなければ、その情報もほとんど役に立たないからです。
でも現場の調達・購買担当者は日々の業務に追われがら、同時に、社内関係者に情報を与える機会に恵まれています。その機会を使わないともったいない。どんなときだって、情報を社内に紹介する、あるいは投げかけることはできます。商品は紹介しても、一回きりです。でも、情報は紹介する機会が一回きりではありません。
もし、あなたが後輩にセラミックコンデンサの選定基準を教える立場にあるとしましょう。具体的な案件を使って、あるいは具体的な商品を使って、このように教える機会は一度きりで終わってしまいます。
しかし、例えば、部下にたいして、あるいは同僚にたいして、「どのようにセラミックコンデンサを選べばよいか」、それを資料化しみては。また、あるいは小冊子のような形でまとめてしまえば。そうなると、その資料は、おそらく長期にわたって社内に残ります。ほとんどの調達・購買担当者の仕事は、その場その場で終わってしまいます。
いっぽうで、小冊子を作れば、仕事は長年にわたって残り続けるはずです。どちらも仕事が、中長期的に見て有益でしょうか? それは考えるまでもありません。もちろん、その小冊子を作る時間が捻出できない、あるいは面倒だという気持ちもわかります。
しかし、ホントに皆さんそんなに忙しいですか? たかが数ページの選定基準小冊子すら書けないことはないはずです。もし、月曜日から金曜日まで、毎日の睡眠時間が3時間で、土日すらも休む時間がないならわかります。
でも、そんなことはないはずです。
この読者のうち、「自分の名前を後世まで残したい」と思うなら、まず、情報を形にしてみましょう。それが仕事を一度きりではなく、成果を繰り返し活用する方法です。調達・購買担当者はモノだけではなく、情報も扱わねばなりません。しかも意識的に。私の師匠は、真剣に目の前の業務に取り組めば、2年で本が書ける、といいました。
後世に残る仕事とは、派手でもなく、遠い世界にあるのでもなく、目の前にあります。私は自分の仕事をすべてマニュアル化・ツール化することに命をかけています。それが、きっと自分の名前を将来に残す、唯一のそして確実な方法だからです。