統計を使って調達を偉そうに語る方法(坂口孝則)
以前、ある企画で「女性週刊誌で掲載される節約ネタはほんとうか」という検証をしました。そのなかで選択したのは、「雨の日に家電量販店に行け」と「決算月に家電量販店に行け」の二つです。前者は、雨の日なのでお客数が少なく、値引きしやすいから。後者は、なんとか決算までに売上を確保したいから、値引いてでも販売するから。といった二つの流言に基づくものです。
さあ、困った。しかし、すぐさま解決しました。気象庁が雨のデータベースを公開しています。そこから調べると、雨の日にほんとうに下がっているかが確認できます。また、決算月はヤフーファイナンスから各社とも確認できました。その月に下がるかどうかは、消費者物価指数で確認できます。
結果では、「雨の日に家電量販店に行け」と「決算月に家電量販店に行け」の二つが、ほぼ根拠のないものだとわかりました。私は怖くなりました。というのも、そういう記事を書くひとたちも、ウソを書いているつもりはないと思うからです。きっと取材で知ったとか、経験則から書いていたりするはずです。しかし、いまでは統計を使って検証が容易ですから、第三者のチェックがはいります。怖いと思った理由は、私の発言も襟を正さなければならないと感じたからです。やはり公的な場で発言する際には、注意が必要です。
この調査のついでに、日本の製品がどのように価格推移をたどったのか見てみました。結果は意外でした。結論だけ書きますので、ご興味があるかたは独自に調べてください。その結果とは「技術優位性のあるものは、値下がりのスピードが速すぎ」「技術優位性のないものは、まったく値下がらず、販売者に利益を与え続ける」といった、不都合な真実でした。
だって、開発力を投資してがんばったメーカーが報われないわけです。そのいっぽうで、100円ショップのような業態は値下がりもせずに利益をあげ続けています。これは調達を考えるにあたって示唆的でした。たとえば、テレビは技術革新がいまだに続いている分野ですが、ハイビジョンも4Kも、ひたすら下がり続けています。そして、その関連部品も同様です。携わっているかたからすると当たり前かもしれません。でも、終始一貫して、「技術優位性のあるものは、値下がりのスピードが速すぎ」「技術優位性のないものは、まったく値下がらず、販売者に利益を与え続ける」という事実があらためて突きつけるのは大きいと私は思います。
さて、私たちはこれからどのような世界に突入するのでしょうか。それは理想でいえば、新商品を作っては売り、最大に儲かったところであっさりと身を引く(あるいは他社へ売却)。そして、新規事業を続ける。といったことになるでしょう。それはイバラの道であり、さらに調達のスタイルも変わっていかざるを得ません。
もしかすると「中長期的な関係性を前提とする調達構造を目指せ」と言い続けている私は、いつかしら意見を転換することになるかもしれません。「短期的でも、安価でそこそこ品質のよいサプライヤを選べ」と。なんだか気持ち悪い感覚があります。同時にみなさんの調達活動はどうでしょうか。考えるに値するテーマでしょう。