拝啓、調達担当者様(ミもフタもない事実)(坂口孝則)

今年、あと少しとなります。そこで今年に印象に残ったエピソードを羅列して教訓を書きます。

エピソード1

先日、ある経営者と話しました。「ところで、日本の中で他国の追随を許さない領域に、素材と電子部品がある。この両産業の特徴はなんだと思う?」と質問されたので「技術力ですか」と私は回答。するとその経営者は「ちょっと違うね。その両産業とも生まれてから、稼げるようになるまで経済合理性を無視した投資を続けていた点だと思う」とのこと。人材育成も同じだ、とこの経営者は言います。

振り返れば、人材育成やスキル、ノウハウについては、良くも悪くも「すぐに役立つもの」が求められるようになっています。ほんとうの差別化や、ほんとうに役立つものは長い時間と熟成が必要ということでしょうか。平凡で凡庸ですが、それが真実なのでしょう。

エピソード2

ある仕事で、会社員なのに億万長者(資産1億円以上)になった人の特徴を調べました。トマススタンリーという著名な研究者が、どのように億万長者になったかを調査研究して結論づけているのですが、「コツコツと貯蓄を重ねて」「自分の職業を愛し」「よく働く人」であるとしています。夫婦で生涯、共働きを続けて倹約して少なからぬ割合を貯めろ、というものです。これも、かなり平凡で凡庸な結論です。

エピソード3

私はこのところ経済と音楽について調べています。私は伝説のバンド四人囃子が好きで、ベーシストの佐久間正英さん(故人)のインタビューをまとめて読みました。すると佐久間さんは「ミュージシャンとして生き残るためには練習が必要」とだけ残しています。才能があっても時代の波は大きいものです。かいくぐるために必要なのは練習……。これも平凡です。

エピソード4

フィットネスクラブの経営者から聞くと、年始と9月の会員登録がもっとも多いようです。年始に目標を立てたり、夏に食いすぎて太ってやせようとしたりする。しかし、大半は長続きしないようです。「どういうメニューが効果的ですか」と訊く私に「なんでもいいです。毎日やることです」だそうで、まあそりゃそうですよね、という感想しかありませんでした。

エピソード5

ある調達部長と話しました。「日本って現場は生産性がすごく高いのに、なぜ調達とかの間接部門は生産性が低いんでしょうね」。「海外の現場を見てくださいよ。同じ人間なんだから能力は変わりません。でも、細かな細かな積み上げで生産性ってまったく変わるんです」。ああたしかに、ではコツコツ積み上げるのが得意な日本で、なぜ調達は生産性が低いのでしょうか。

「そりゃ打ち上げ花火をあげるだけで、結局は最後までやらないもん。目標を掲げるのは誰でもやるけれど、その報告が大切で、その後は誰もフォローしようとしない」。これは某社でのやりとりでしたが、おそらく日本中で似たような光景が散見されるのでしょう。

以上、5つのエピソードを紹介しました。新型コロナで大変な状況が続いていますが、つまるところ地道にやればいいのか、いや地道にやるしか方法はないのだ、と気づいた一年でもありました。しかし、私はこの5つのエピソードが希望のように感じています。だって、目の前のことから逃げずに地道にがんばって、コツコツとやり続けたらそれでいいんですからね。凡人にとっては最高です。

そしてコロナ禍後には、この基本ができている人、が勝つのではないかと私は予想しています。

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