非常識な調達業務とは何か?(坂口孝則)

白物家電で有名なハイアールをご存知でしょうか。この会社は創業期に、工場作業者に「トイレを必ず使え。工場の敷地内でXXXをするな、汚いだろう!」と指導した話がよく知られています。XXXは伏せ字にしましたので、ご想像におまかせします。

日本の製造現場で「トイレを使え!」と指導しますか? 日本の現場は優秀だからありえません。しかしハイアールは、日本の常識では論外な社員も戦力として活用できる点がすごいのです。中国企業はどんな社員でも活用するために、仕事のマニュアルを定め、型を作り、それを世界中で複製できるようにしました。

いっぽうで、これまで日本の強みは、現場社員の優秀さにありました。だからこそトップが頭を使わずに、現場に任せっぱなしになっていないでしょうか。自発的な改善を現場社員に求め、根源的な変化を先延ばしにしてきました。つまり現代では日本の強みが弱みに変わり、他国の弱みが強みに転化しているのです。

話は変わるようなのですが、2018年の鳥貴族の中間決算発表は私にとってちょっとした驚きでした。同社は強みの効率化を進め、注文にタッチパネルを採用したのですが、その結果、店員と客とのコミュニケーションが激減。客単価が下がってしまいました。同社は、もっと非効率的な対話を重ね、頻繁に声掛けを行うと発表しました。何が強みで、何が弱みかは、時代の文脈に依存しています。

この前、ある場所で、私の仮説を述べるとお叱りを受けてしまいました。が、その仮説とは、メイドインジャパンの製品があまりに長持ちするのが問題ではないか、というものです。これまでは日本の強みにほかなりませんでした。しかし、現代では弱点になるのではないか。日本車は12年は乗れます。しかし海外の自動車メーカーでは2年に一回メンテナンスでマイコンまわりを交換したりソフトウェアを更新したりしてアップデートする取り組みがあります。まるで2年毎に買い替えを勧めるiPhoneのようですね。

いやもっというと、企業は商品を利益ゼロで販売して、メンテパーツやソフトで儲けるビジネスモデルに転換する必要があるのではないでしょうか。強みと弱みの再点検です。

ここから大胆に提案します。

1.「ビフォアものづくりから、アフターものづくりへ」。QCDで長期的な安定性を志向するのではなく、サービスパーツやアフターサービス関連の調達に力を入れるべき時代になっています(現在、それらはテキトーに調達している場合が多い)
2.「製造業から情報製造業へ」。モノからサービス、モノからソフトの流れがある以上は、調達部門の専門領域をハードからソフトに大胆に入れ替える必要があります
3.「性善説調達から性悪説調達へ」。サプライチェーン全体の底上げではなく、ロクでもない社員、ロクでもないサプライヤであっても即戦力になるよう、ルール化、ガバナンスの強化が必要になります

これは非常識でしょうか。それともこれからの常識でしょうか。そして、調達担当者がキャリアを築く際に重要なのは、この時代の文脈に自分を当てはめることだと思います。この辺については、このメールマガジンや次の土曜日のイベントでもお話したいと考えています。

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