なぜ古臭い「交渉」スキルを再注目すべきなのか(坂口孝則)

以前、非大量生産時代に、どのようにコスト削減をなすべきかというイベントをしました。面白かったのが、終了後の打ち上げの席で「やっぱり、これからは交渉が重要になってくるよね」とみなで話したことです。

私は、以前「交渉はバカがやること」とまで書きました。つまり、プロセスとか、査定スキルとか、仕組みが必要なのであって、最初から交渉に頼る組織やひとは順番を間違っている、という意味です。だから、過激に「交渉はバカがやること」と書いたわけです。

しかし、時代は非大量生産に移りました。

ちょっとまわりくどく説明させてください。なぜ最近、私は「交渉スキルが復活するのではないか」と思っているのか。というのも、現在の日本のように、生産量が減りつづけていれば、これまでのように大量生産を前提とするコスト削減はできません。そして、将来の予想も不明瞭になりがちです。

だからこそ、(これまで私が否定してきた)「交渉能力」やスキルが重要になってくるのだと思うのです。これは逆説的です。ただ、微量生産時代になればなるほど、交渉者がサプライヤを納得させる場面が増えると思うのです。

そこで、私はこのところ、海外の先端の交渉系書籍を読んでいます。そこで面白かったのは、「交渉相手には、交渉相手から受ける、真逆の印象を語れ」というものです。どういうことでしょうか。

それは、文字通りなのですよ。相手が怖そうなひとだったら、「ほんとうのあなたは優しい人ですね」と語ってあげるのです。おおらかなひとに見えたら、「でも、実は芯があって、仕事に厳しい人でしょうね」とか。ちゃらんぽらんに見えたら「最終的には、ご自身のなかにあるロジックで決断なさるんでしょうね」とかね。

なぜかというと、人間は、表面的な評価と真逆の像を自身に抱いているのです。だから、「ああ、この人はわかってくれている。協力しなければいけない」と思わせるには、その真逆の像を「私だけは理解していますよ」とメッセージを送る必要があるのです。

これはちなみに潜在意識の考え方からも合致しています。顕在意識とは逆の自己像を潜在意識がもつことで、人間は精神を保っているのです。

たとえば、私は「理論的、理屈っぽい」と思われていますが、「最終的には、直観で決める人ですよね」といわれたら「そうなんだよー。わかる?」と嬉しそうに語る気がします。交渉は、これから私のキーワードになりそうです。

くわえて、自身を交渉相手に身近に思ってもらうときにも、これが使えるといいます。「あなたは、私のことをこう思っているだろうけれど、実際には、こんな側面もあるんだよ」と伝えることです。そのギャップがあるほど、親しく思ってくれるというのです。

そして、真の交渉力獲得のためには、「伝え方」さらには「このひとのいうことなら聞いてもいいかなあ」と思わせる雰囲気の醸成にあるのは間違いありません。そのノウハウについても、おって説明していきます。

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