これを知らないから調達担当者はダマされる(坂口孝則)

突然ですがクイズです。ある年の新聞記事を読み、あなたはどこがおかしいと判断できるでしょうか。

「経済企画庁の調査は、全国の製造業三百社を対象としたアンケートで、九十社から回答を得た。それによると、円高の恩恵を受け、すでに調達品の価格を低減した企業は五十%、予定中は十四%となっている。自動車部品製造業の七五%、半導体製造業の七六%がすでに低減済と回答した。」

まずは、ばかばかしい点から列挙してみましょう。
・調査対象は三百社とはあまりに少なすぎ、製造業を代表していない
・三百社のうち九十社が回答したというものの、そもそも、円高で調達品が安価になっている企業は積極的に回答したはずで、他の二百十社はむしろ価格低減できていないのではないか
・ということは、九十社のうち五十%で四五社が低減できたわけだから、三百社のうち四五社が低減しただけかもしれない
・くわえて自動車部品製造業であれば輸入品が少なからずあるのは当然で、そのうち一品でも価格が低減したらカウントするなら
・また為替予約などの制度があり、ほんとうにその時点での為替のみが影響したと断言していいか不明

と私は考えます。こういう批判的な態度は必要だと思うのです。

次の記事はどうでしょうか。

「××新聞社は、東京、大阪の経営者を対象にしたアンケートで、調査結果をまとめた。総選挙の焦点となる消費税率引き上げ問題では、平成31年10月から8%を10%に引き上げることへの「賛成」は37.7%だったのに対して、「反対」「一時凍結」を合わせると60.3%に達し、経営者も消費税の引き上げに強い抵抗感を示していることが明らかになった。一方で、将来の消費税率は15%以上を予測する人は39.6%と約4割に上り、目先の引き上げには反対でも、高齢化が進む将来に備えた場合に消費税への見方が揺れていることがうかがえる。」

・経営者は財政の専門家ではなく、税制の専門家ではない
・「「反対」「一時凍結」を合わせると60.3%に達し」と書かれているものの、「将来の消費税率は15%以上を予測する人は39.6%」ということであれば、その「一時凍結」とは「消費税を上げるのは賛成だが、現在は止めたほうがいい」という意味としか解釈できないため、消費税率アップ反対ではないのではないか

私は個人的に消費税率アップには反対です。前回の税率改正では個人消費が落ち込んだのは事実ですから。しかし、個人的な考えは置いておいて、あくまでもアンケート結果を解釈するときには正しく読み解くべきだと思うのです。どうも、××新聞社は消費税率アップ反対、という立場がまずあって、それに沿うようにアンケートを解釈したとしか思えません。

私が調達・購買部門の資料を読むと、「えええ! この根拠でこの結論」とか「あ? このデータでこの結論?」と驚くことがあります。こういったアンケートや調査を読み解くコンテンツを作ろうかな、と考えています。とりあえずデータを疑うクセをつけましょう。

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