「あいつ」を調達業務に使う方法(坂口孝則)

2014年にアカデミー賞にノミネートされた9作品のうち、6作品は、実話がベースの脚本でした。事実は小説より奇なり、といいます。それはほんとうで、目の前の出来事のほうがよっぽど映画的です。誰でも一冊は本が書ける、というのは、人生を語れば誰だってそこにドラマがあるからです。だから、AI時代に調達・購買部員は何をすべきか、という質問には、「まず目の前の業務に真剣にぶつかる」しか、回答がないのかもしれません。

真剣に、真摯に、真面目に。そして考え抜いて仕事にあたっていれば、かけがえのないドラマを経験できるはずです。そしてAIには代替できない、新たな仕事を創造できるでしょう。よく「AI時代にも勝ち残る方法」が論じられます。しかし、大半のひとはそもそも仕事に真剣ではありませんから、真面目さはそれだけで優位さをもたらすはずですよね。

そこで、ちょっと抽象的ですが、仕事に、真剣にぶつかる過程で「あいつ」が出てくる話をします。なお、私は特定の宗教は信じていません。ただ、すこし宗教的です。

私は、かなり無理なスケジュールを引き受けます。数日で膨大な例の文献を調べるとか、かなりの枚数の資料を作るとか、無数の書籍を読まねばならない、とか。そんなとき、私は、ほんとうに絶望的な気持ちになります。毎回「無理だよ、これ」と思っています。しかし、そんなときに、ひたすら地道にやります。インタビューでは偉そうに答えますが、コツなんてありません。地道にやるだけ。誰だってできます。ただ誰も地道にやらない。だから自分だけは地道にやる。

そんなときに「あいつ」がやってきます。「あいつ」としか表現ができません。ただ、「あいつ」がやってくると、文献のなかで重要な箇所を教えてくれます。そして、資料作成はこう作ればいいと教えてくれます。さらに、書籍のなかで重要なページを探してくれます。なぜかそこが目に飛び込むのです。「あいつ」のおかげです。気づくと、不可能だったはずの仕事が完了しています。

世の中には、「あいつ」と出会ったことがなく、ダラダラと遅延したり、低いアウトプットを続けたりするひとがいます。繰り返すと、私は宗教を信じていません。ただ、自分に乗り移ってくれると、とたんに生産性があがるのです。私の仕事を創造的と思ってくれるひとがどれだけいるかはわかりません。ただ、アイディアや事業創造も、「あいつ」のおかげです。AI時代に生き残るためには、この「あいつ」を使って創造的になるべきではないか、と私は思います。

「あいつ」を呼び出す方法を列記します。

・ちょっと自分には難しいかなーと思う仕事を継続して引き受ける
・早起きして、地味ーに考えたり、調べたりする
・まったくわからない、まったく理解できない、と思っても、地味ーに続ける
・「そろそろ、お願いします」と念じる
・何も改善しないが、それでも諦めない
・「そろそろやばいので、お願いします」と念じる
・やはり、何も改善しないが、それでも諦めない

すると、タイミングはまったく読めないものの、「あいつ」が君臨します。「あいつ」さえ、来てくれれば、あとはこっちのものです。

日常業務はロボットにでも任せて、あまった時間をワンランク上の業務に費やす。その過程で「あいつ」を使う。先週もご紹介しましたが、前半のロボットについては、レポートも書きました。

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