馬鹿な調達・購買部員にちゃんと働いてもらう方法(坂口孝則)

ひさびさに痛快な話を聞きました。某社は、業績を30年にわたって伸ばし続けています。秘訣はなんでしょうか。もちろん、一つではありません。仕組みが無数にあります。たとえば、全員のボーナスは紙に貼られて公開されています。一番下と一番上では、二十倍以上の開きがあります。さらに一番下の成績だったひとは、ボーナスのお札を入れる作業を担わなければならず(なんと現金支給です!)、かつ、その様子が社員にビデオ公開されています。こりゃ勝手に辞めていくわけです。

さらに、社員全員の机に引き出しがありません。捨てなければならないからです。すると、書類をもてません。すべてをオンライン上にアップロードし、それを共有させる仕組みです。また、管理職は、もっとも忙しい月末から月初にかけて有給をとらねばなりません。その有給中に働くと、評価が下がる仕組みになっています。働き方改革のためではありません。そうすると、必然的に、自分がいなくても業務がまわるように部下を指導するからです。

この某社では、頻繁に異動があります。その際に、かならず引き継ぎマニュアルを残すルールになっています。それも、かならずオンライン上に記載するルールになっています。次に異動するひとは、前任者が残してくれた引き継ぎマニュアルを、さらにアップデートすることを求められます。そうしているうちに、じょじょにマニュアルが網羅的なものになっていきます。マニュアルを書かないと、自動的に評価がさがります。

社員はできるかぎりサボろうとします。たとえば、ルールがあっても、そのうち誰もやらなくなります。優秀なひとが転職してきたとします。まわりに社員は冷たく扱います。躊躇入社組の成績が良かったら、古株社員は肩身が狭くなるからです。しかし、そのようにサボったり、転職組に冷たくしたりするのも、この某社によると「人間だもの。そんなの当たり前だよ」といいます。だから、建前ではない、評価連動の仕組みが必要なのです。

他にも驚愕するような仕組みばかりです。しかし考えるに、人間心理というか、行動経済学というか、ひとを動かす工夫にあふれています。ちょっとやりすぎなところはありますけれども。

そこで、みなさんに提案です。同僚や、他部門やサプライヤに、阿呆で馬鹿でろくでもないひとがいますよね。そう、あのひとです。しかし、そんなときには、「こういうひとが、そのていどの働きしかしない理由があるはずだ」と考えるようにしましょう。そして、「こういうひとが働く仕組みはなんだろう」と考えると面白いでしょう。

調達・購買部門の強さも、けっきょくのところ、この仕組みをいかに作るかにあるような気がします。

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