監視社会における調達業務のこれから(坂口孝則)

世界経済フォーラムで、アーティストのヘザー・デューイ・ハグボルが発表した『Stranger Visions』は衝撃的でした。一見したところ、たんなる人間の顔に見えます。しかし、これは、道端に不法投棄された吸い殻や、チューインガムを拾い集め、そのDNAを分析し、不法投棄した人間の顔を形作ったものだったのです。誰が捨てたのか、これで一目瞭然です。

よかったら「stranger visions heather dewey」で検索ください
(わざと半角にしていますので、貼り付けてください)。

もちろん、DNA分析には時間がかかります。しかし、これが瞬時にわかる技術として流布したらどうでしょう。各国の都市では、不法投棄者がただちにさらけ出されます。究極的にいって、これが良い世界か悪い世界か。その判断はみなさんに委ねます。

以前、面白い話を聞きました。お弁当屋さんが、弁当の店頭在庫を公開するために、ユーチューブで24時間の中継を開始しました。いまでは、スマホで撮影しつづければ、すぐ中継できますからね。すると、何が起こったか。万引きが激減したそうです。つねに撮影されているため抑止力が効いたわけです。

きっとこれからは、街中のいたるところにカメラが設置され、さらに顔認証技術が重なれば、言葉を検索するように、誰かの行動を検索できる時代が2030年ごろにやってくるはずです。プライベートと公(おおやけ)の違いはなくなり、すべてが混在するでしょう。

ここでブロックチェーン技術が重要になります。分散型台帳技術ともいわれるブロックチェーン技術が発展すると、あらゆる情報が中央集権的ではなく、さまざまなコンピュータに記録されます。さらに改ざんはできません。たとえば、現在、製品の不具合があると、ティア2サプライヤ、ティア3サプライヤ、ティア4サプライヤ……と、どこに問題があったか遡る必要があります。しかしブロックチェーン技術で記録しておけば、瞬時に、そのサプライチェーン全体が把握できます。さらに、誰かが悪意をもって書き換えることはできません。

つまり、これからは、「誰もが悪夢のような透明化の時代に生きていく」と考えるべきです。

私たちは、ブロックチェーンによって「誰が、誰から、何を調達している」情報は明らかになりつつあります。想像するに、次の段階は、「何個、いくらで調達している」といった情報も明らかになっていくでしょう。実際に、アパレルブランドのエバーレーンなどは、生産コストを全公開しています。これまでの調達業務観からは大きく外れています。

すべてが公開されたとき、調達・購買部員には何が残るでしょうか。きっと、それを考えることに、打破のヒントがあります。そして、調達・購買部員は何を磨く必要があるでしょうか。ここではあえて、抽象的に述べておきます。「基礎力と、動物的なリーダーシップ」にほかなりません。

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