サプライヤトラブル対処法12(牧野直哉)

事例:サプライヤから突然ディスコン(discontinued、ディスコンティニュード)やEOL(End Of Life、生産終了)を通告される。理由は
・数量減
・採算が合わない
・品質要求が高過ぎる
・事業売却
 等様々。通告される品目が多すぎて、対応が追いつかない

対応策2:「サプライヤでディスコン/EOLは突然起こらない」と前提する

前回の記事では、ディスコンやEOLの情報がもたらされたときの対応について、ディスコンやEOLの連絡を受ける前の事前の取り組みが必要と書きました。

ディスコンやEOLのサプライヤからの連絡は、本当に「突然」行われているのでしょうか?この手の連絡は、「突然さ」が問題なのではありません。十分な対応期間があったとしても、継続供給を願うバイヤ企業にしてみれば、いつ連絡をもらっても突然です。突然連絡されることは、ディスコンやEOL対応の問題の本質ではありません。

ディスコンやEOLの中には、まれに突然発生するのもあるでしょう。1社供給状態だった原材料メーカーの稼働停止が例です。しかし最近ディスコンやEOLの連絡が増えているのは、サプライヤの営業戦略や生産品目戦略が起点。ディスコンやEOLする商品に費やしていたリソースを、より売り上げ拡大や利益拡大が期待できる品目へシフトするための戦略的意志決定です。

調達・購買部門として注視すべきは、サプライヤの意志決定プロセス。思いつきではなく、何らかのルールに沿って行われているはずです。検討段階で、ディスコンやEOL対象品目を購入している顧客に情報が漏えいすれば、円滑な社内手続きに横やりが入るため、できるだけ内密に事が運ばれるでしょう。注目すべきは、サプライヤ社内の動きです。バイヤ企業が連絡を受けるかなり以前から、ディスコンやEOLの検討が行われ、意志決定されている点です。

仮にサプライヤにこのような申し入れを行ってみます。
・ディスコンやEOLの決定には、在庫するにしろ、代替品を検討するにしろ、すべてサプライヤ側の決定に従う
・バイヤ企業として生産継続や、EOLまでの期間延長は行わない
・全般的に決定を尊重する
・代替製品がある場合は、その評価も積極的に行うし、必要な協力は惜しまない

これからディスコンやEOLといった情報を他社よりも先んじて入手することが、競合他社対比での優位性につながります。バイヤ企業から無理な横やりを入れないと宣言します。サプライヤのディスコンやEOLに関するバイヤ企業への連絡にまつわる心理的なハードルも下がるはず。ディスコンやEOLに対応した取り組みを、やるかやらないかの問題ではなく、いつやるか、タイミングの問題と認識します。競合他社よりも先んじて行うことで、安定した生産や自社製品の供給につなげられるはずなのです。

こういった取り組みには、サプライヤへの発言を裏打ちする社内関連部門の動きが欠かせません。ディスコンやEOL情報を積極的に入手しても、バイヤ企業内の動きが悪ければ、サプライヤが早期に情報開示する価値を認識できません。購入要求部門や生産(在庫)管理部門には新たな負担となります。しかし、ディスコンやEOLのたびに、生産継続やラストバイでサプライヤと押し問答するのは、バイヤ企業内でも非効率だし発生負荷も大きいのです。

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