サプライヤトラブル対処法16(牧野直哉)

事例:ある購入品「A」の構成部品に発錆を確認。非常にセンシティブな製品のため、調達部門と品質保証、技術部門総出でサプライヤと原因究明と再発防止対策を実施。原因は防錆剤塗布前の洗浄工程と、洗浄後乾燥が不十分であるとの結果に至り、サプライヤ合意の下新たに強制乾燥工程(ドライヤー)を追加。外気温度によって強制乾燥時間を変化させる綿密な再発防止策を立案した。
新たな工程での生産が開始され3ヶ月後にフォローを実施。外気温度ごとに設定された乾燥時間の確認を現場で行うと、設定通りに行われていない事態が発覚。行われていない理由を確認すると、現場作業者による「ちょっと長すぎると感じたこと」と判明。「ちょっと長すぎる」の部分に明確な根拠はなく、合意したことが現場で行われない場合の対処はどうすれば良いですか?

対応:よくある話です。

まず、ルールに沿った正しい作業が実践されているかどうか。正しい作業には、現場作業者のセルフチェックと、管理者の第三者チェックのダブルチェックが必要です。特に問題発生の後、再発防止策が行われているかどうかは、日常的なチェックよりも少し高い優先度、かつ意識を傾けた実行が必要です。発注企業には問題発生による影響緩和が強く意識に作用します。そういった問題意識が、サプライヤの営業パーソンだけではなく、社内に浸透しているかどうかも確認が必要です。

今回の発生事例の直接的な原因は現場作業員の勝手な判断による作業実行です。しかし、元々発生した問題とあわせ考えると、複数の問題要因が重なったときに問題が顕在化しますね。ものづくりにおけるサプライヤ確認は、次の3つを必ず行います。

①生産現場における作業内容を、現場の管理者に確認
②現場作業員に、管理者に確認した内容が理解されているかを確認
③説明された作業内容通りに行われているかどうかをダブルチェック(作業者のセルフチェックと管理者の第三者チェック)

①~③がかみ合って実施されなければ、事例のような問題が発生します。バイヤとして悩ましく感じるのは、自社をふくめ作業員のアイディア創出のモチベーションまで奪うことなく対処する方法です。

今回の事例での「ちょっと長すぎると感じた」点は、乾燥に要する時間に関する問題意識。1分でも短ければ、一定時間内により多くの処理が可能です。アイディア創出そのものに問題はなく、創出したあとの対応に問題があるのです。乾燥時間が長いと感じたら、短い時間で乾燥状況と外気条件をチェック。データを蓄積して、従来よりも短い時間の場合を検証します。その上で、発注企業にも了解を得るといった取り組みが欠かせません。今回は、そういったアイディアを具体化する方法論が間違っていたのです。

「指示したとおりにやれ」とか「余計なことはするな」といった物言いは避けるべきです。サプライヤ現場作業員のアイディアは、発注企業の調達・購買部門にとって非常に尊い取り組みであり、効率改善・コストダウンの源泉。指摘したり改善を求めたりする具体的な内容にはちゅういが必要です。

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