サプライヤトラブル対処法10(牧野直哉)
事例:低頻度購入品の価格変動対応
購入品の中には、数年に一回の頻度で買う品目がある。見積依頼を行うと、原材料に起因する大幅値上げを通達ベースで知らされる。価格見直しを申し入れる/臭わせても、相手にされず、サプライヤの通告ベースの大幅値上げを飲まざるを得ない
対応策3:一方的な「通告」になる理由と対処法
サプライヤから一方的な通告を受けるのは、そもそもサプライヤにとってバイヤ企業の価値が低い、小さいからに他なりません。顧客としての魅力に欠けるんですね。この現実に対しての対処が、将来的に低頻度購買時点での問題発生を回避します。
まず、買い手=顧客=サプライヤから最恵国的待遇(*)を受けられる妄想から脱します。サプライヤは、購入内容や量によって、顧客の層別管理を行っています。私自身、バイヤ時代に複数のサプライヤから、顧客層別管理についてヒアリングし、顧客ランクをアップさせるにはどうしたから良いのか?についてサプライヤの営業パーソンと検討していました。
サプライヤは差別化を図って、他ではできない特定のモノやサービスの供給を目指します。しかしこの「差別化」が難しいのも事実です。バイヤは、サプライヤ数をふやすことなく購買することも重要なポイントです。
目指すべき姿の1つに「集中購買」があります。調達・購買部門で集中すべき対象は、①購入品目 ②購入窓口 ③サプライヤの3つあります。低頻度購買によって発生する問題を回避するには、品目にフォーカスすると低頻度だけど、他の品目を含めて高頻度購買を実現させます。一般的には、商社を活用したり、取扱品目の広い代理店を活用したりします。
大規模に集中購買まではできなくても対応策はあります。サプライヤの営業パーソン個人の年間売上規模を把握して、売上規模の最低10%程度発注できないかといった取組も有効です。バイヤの皆さんと会話していると、担当している営業パーソンの売上規模を把握していないんですね。私は新たに営業パーソンと出会うと必ず「XXさんの売上の年間目標ってどれくらいですか?」は必ず聞いていました。極論すれば、年間売上が1億円の営業パーソンに、年一回100円の発注条件改善を要求するとします。相手にされない事態は容易に想像できます。
(*)最恵国待遇とは、第三国に与えている条件よりも不利にならない待遇を与える、という国家間の協定です。通商、関税、航海などについて、第三国に有利な条件を示した場合には、最恵国待遇の取り決めのあるすべての国にも、同様の条件が適用されることになります。例えば日本がアメリカから輸入している特定の品目の関税率を引き下げた場合、イギリスやフランスなどからの同じ輸入品目についても自動的に同様の措置をとることになります。