あなたはサプライヤからの罵声に耐えられるか(坂口孝則)
だいぶ前なのですが、弁護士の方からこう聞きました。「日本の接待交際費と、米国の企業間訴訟費用は同じなんだよ」と。この真偽は確認していません。また時代によって異なるでしょう。
ただ、なんとなく納得できました。人間関係で成立する日本の企業取引と、そして契約で成立する米国の企業取引の違いが鮮やかに対比されているように感じたからです。
日本ではいまだに「誰が言ったか」が重視されます。批判をすれば人格否定だと感じてしまう人も少なくありません。
米国企業にネットフリックスがあります。ここの役員は、社員数十人にアンケートが取られマイナス10からプラス10までの評価がくだされます。部下が役員を評価するのは日本ではなかなかありませんよね。これも、会社で働くものは全員が平等で、役職は単に役割分担にすぎないと考えられているゆえです。
人間関係で成立する社会が悪いわけではありません。ただ「誰が言ったか」が重視されると、なかなか本音を言いにくい状況は起きがちでしょう。
話は変わるようで、あまり変わりません。
私のような仕事をしていると重要なのは「当事者の片方だけの意見を聞いて判断しない」ことです。目の前の人が嘘を言っているとは思いませんが、片方だけの話を聞いて判断するのは危険です。目の前の人とは親しかったとしても。
先日のことです。具体的に書けないのですが、サプライヤが言うことをまったく聞かない、と相談を受けました。ならばサプライヤに理由を聞いてみようと、サプライヤに言い分を聞いてみました。すると調達側の不平不満が大量に出てきました。
・コスト削減交渉の理屈や論理性がめちゃくちゃ
・そもそも提供される情報が不十分で、忖度せねばならない
・短納期ばかりで、一方的にお願いされるだけ
私が「コスト削減に協力的ではない、という意見もあった」と伝えると、逆に「以前から、提案している内容をそもそも検討してくれていない」とさんざんでした。しかし、さらに面白いのは、日ごろ調達側に伝えているかというと、ほとんど伝えていない。理由は、言ってもムダだと感じているとか、言っても聞いてくれないといったものです。理屈や論理は、事実として反論すればいいと思うのですが、そのような雰囲気にないというのです。
人間関係でがんじがらめにならない。あるいは相手の言いたいことを傾聴する。これだけでかなり前進するのは間違いありません。
現在、日本だけではありませんが、どうも不祥事が起きた企業などを見てみますと、「止める人がいなかった」ことに気づきます。これが最大の学ぶべきポイントではないでしょうか。ガバナンスとか、内部統制といった難しい話ではなく、「いや、それは違うでしょう」と言える環境づくり。そして理屈で話し合える関係性を築きたいものです。
ところで私は、池田に「できるだけ私のことを悪く書け」と伝えています。批判されなくなったら終わりだからです。それにしても最近は悪く書かれないから、身を引き締めばなりません(意味不明)。