【緊急】サプライチェーン崩壊の防止を!(坂口孝則)

異常な事態が起きています。舞台は米国の議会。トランプ大統領の再選を求める支持者たちが押し寄せ堂内に侵入。暴徒と化し死亡者まで出ました。と、ここまでは日本でも報じられています。

背景はやや複雑です。もともとは、上院の議長であるペンス副大統領にトランプ大統領が「選挙の結果を無効化」するように求めていました。しかし、無効化は裁判でもほとんど認めてられていないために、ペンス副大統領は拒否します。すると、トランプ大統領がペンス氏を非難。さらにトランプ氏は支持者へのあおり立てる演説にいたりました。

ここで興味深いのは、日本のメディアでは「米国の最高裁判所のトップは、トランプ大統領が指名した」点を騒いでいましたが、むしろトランプ氏に不利になる判断をくだしている点です。皮肉ながら、これこそ成熟した民主主義といえるでしょう。ただその点は今回の本題ではありません。

ここで検索してもらいたいのはリンカーン・プロジェクトです。これは共和党内での反トランプ運動で、おそらくペンス氏をも巻き込んだと思われます。当プロジェクトに多額の献金をしているのは有名企業のオーナーで、この一年間トランプおろしを画策してきました。

現在、米国では就任期間のあと数日で、何か特別なことが起きるのではないかと騒がれています。正直にいえば私はさほど可能性は高くないと思うものの、イランへの攻撃もありうると指摘する論者がいます。核戦争に発展する可能性もあると。また、最初は「ウソだろ」と思いましたが、12日(火)にはキューバをテロ支援国家として指定しました。残り数日、世界に混乱が起きないことを願うばかりです。

逆の動きもあります。各SNSが、トランプ関連のID等を停止処分としました。さらにメディアはトランプ政権の要職に就いていた人たちの今後を徹底的に追跡調査するとしています。いくつかの企業はトランプ寄りの議員への献金停止を発表しました。トランプ氏へ名誉学位を与えていた大学までも、取り消す検討をすると発表するほどです。

つまり手のひらを返すように、反トランプの動きが加速しています。しかし私はこれについて善悪を論じません。事実がそうだというだけです。サプライチェーンではリスク分散が必要です。良くも悪くも、何かに寄りすぎるリスクが顕在化しただけにすぎません。私たちは商売人です。私は常に「どっちつかずの、曖昧な態度」を推奨してきました。

全集中ではなく、分散が必要です。とくに、今後もサプライチェーンや調達網において一部が崩壊してしまうリスクがあります。それを全体の崩壊につなげないために、私たちが必要なのは「あつまれ、サプライヤの森」ではなく「わかれろ、サプライヤ」「わかれろ、生産地」です。わかりにくいかな、この表現。

2021年に実施したい調達施策について述べておきます。それはRCEPの利益享受への取り組みと、最適生産地・最適調達地の模索です。

RCEPはASEAN10カ国等と結ぶ包括経済連携です。品目数でいえば、対ASEANで88%、対中で86%、対韓で81%と輸入関税が大幅に撤廃されます。ただし、その恩恵を受けるためには輸入品の原産地認定等が必要になります。何をどこから調達すればいくらで、原材料や組み立てがどうなっているのか調査せねばなりません。

生産地がどこで、調達先がどこなのか。組み合わせ次第では多数の選択肢があります。それにはコストだけではなく、品質やキャパシティなども問題になります。答えはどの組み合わせか。それをシミュレーションする胆力が求められています。調達構造を見直せば他社より優位になるのですから。そして同時にリスクの分散も狙わねばなりません。

私はトランプ大統領の現状から話をはじめました。象徴しているのは、世界の混乱が続く、ということでしょう。調達業務が変化への追随業だとすれば、いまほど実力が試されるタイミングはありません。

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