「調達部員はたいしたことがない」大問題(坂口孝則)

仕事で広告代理店の方々と話す機会がよくあります。広告代理店は伝統的に多くの人数で会議に参加します。ちょっとした会議で10人とか。そうすると1時間まったく発言しない方もいます。ただ、以前はあまり気になりませんでした。しかし、テレビ会議が日常になると、発言しない人の存在が目立ちます。発言しないのに、ずっと私を見ている怖さもあるのでしょう。

そして、もう一つ気づいたことがあります。実際に話しているとわからなかったのですが、テレビ会議では話の内容の中身がほとんどない人が多いと気づきます。

きっとこういうことです。リアルな場や職場で人と接しているときよりも、検索や自分で調べる機会が増えます。そうすると、大半のことはわかります。すると専門家と称する人たちは「たいしたことがない」と気づきます。つまり、テレビ会議は、その人の実力をむき出しにしてしまうのです。

先日、某社の設計者から質問を受けました。「調達の人って何をやっているんですか」と。テレビ会議が中心になって調達人員を見ていると、「調達の専門性」というのを持っているように見えない。価格交渉といっても、単に下げてほしい、といっているだけ。納期調整といっても「納品してくれ」とお願いするだけ。それってプロフェッショナルの仕事なのだろうか、と。

みなさんはデービッド・アトキンソンさんを知っていますか。私は氏の主張をすべては信じていません。ただ面白いと思ったのは、これまで日本企業は人口の伸びくらいの成長しかしていないと指摘した点です。つまり、各企業はがんばっているように見えたけれども、単に時代が良かったんでしょ、というわけです。

日本はご存知の通り、人口減少さらに不景気の時代に突入しています。これまでは極端な話、どんな人材でも働いてもらえばよかった。しかし、現在の状況を見てください。AIの開発者や、データサイエンティストなど、限られた職種が高騰しているだけで、文系職種などほぼ注目されていません。貧しくなると、貧富の差が拡大していきます。

60代は逃げ切りました。問題は20代より上の現役世代です。

再び、設計者からの「調達の人って何をやっているんですか」という質問に戻ります。自問すると、どのような答えでしょうか。

私はさまざまな場で調達人材のプロ化と地位向上を叫び続けてきました。それは繰り返しません。ただ、もう一つ、トンチのようなことを話せば、そもそも「調達の人って何をやっているんですか」と質問されない関係づくりが重要だと考えています。

つまり、これからは、意図的に内部と外部の人間関係を構築する必要があります。要するに仲良くする。まったく時代に逆行しています。しかし、私にはこれが生き残り策に思えるのです。技を磨きながらも、人間関係においては「あんた、古いねえ」といわれるくらいベタベタしておくくらいがちょうどいい。内部と外部から「キミに任すよ」と選ばれることです。

ちょっとあえて抽象的に終わります。調達人材に必要なのは、スキルと知識だけではなく、笑顔と雑談力です。

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