調達BCPで重要なたった一つのこと(坂口孝則)

「まったく役に立たなかった!」

東日本大震災大震災のあと、調達関係者へBCPについての感想を聞いたときの話を思い出します。事前にBCPを策定していた企業はたくさんありましたが、それでも無意味だったというのです。

今回、ぜひお読みいただきたい調達BCPについて述べます。

新型コロナウイルスは、ふたたび調達部門にBCPの重要性を再認識させました。中国だけではなく国内からの調達も寸断してしまいましたし、今年は東日本大震災から10年の節目にあたります。

BCPやリスクマネジメントは、単純化すれば「リスク要因を洗い出して」「対策を講じる(あるいはあきらめる)」ものです。ここには奇策がありません。しかし、多くの企業のBCP等を支援したり、話したりする機会が多く、その過程で学んだ重要点を一つご紹介します。

本来なら
・Aが起きる、Bが起きる、したがってCが起きる
と想定しなければならないところ、
・Aが起きる、Cが起きる
と考えてしまい有効な対策を考えられない企業が多々あります。

抽象的ですよね。たとえば、コロナ禍で飲食店は大変です。
「疫病が生じる」→「客数や客単価が減る」→「売上が下がる」
とすべきところを
「疫病が生じる」→「売上が下がる」
と結びつけてしまい、一体、何に対策を打てばいいのかわからなくなってしまうのです。

調達でいえば
「震災」→「取引先の工場が停電する」→「部材の供給停止」
あるいは
「震災」→「取引先の物流が停止」→「部材の供給停止」
といったように直接的な要因を洗い出さねばなりません。
「震災」→「部材の供給停止」
と短絡的に結びつけてしまうと、有効な一手が思いつきません。

もちろん「取引先の工場が停電する」「取引先の物流が停止」とは例です。この対策を決めろ、という意味ではありません。さらに、このレベルではなく、より細部を考えていく必要があります。ただ、主旨は、直接的な要因を考えなければ、曖昧な対策しか思いつかない、ということです。

そんなの当たり前だ、と思ったあなた。すみません。しかし、実際に多くの調達部門は形だけのBCP、深堀りしないリスクマネジメントになっているのが実情です。抽象的なアドバイスですが、深堀りと実質的に役立つBCP設定を願います。

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