サプライヤー戦略(8)なぜ系列発注は優れていたのか-3

・戦略的癒着という関係の副産物として

 

受発注数量のブレの少なさによって、コストが安価に「ならざるをえない」理由については前節で述べました。その戦略的癒着関係によって得られるのは、絆の強さだけではなく、相手のコスト構造の安定化だったのです。ここで、副産物として次の教訓が導かれます。

  • 提示発注数量の精度向上……バイヤー企業によっては発注予定の数量よりも、多くの数をサプライヤーに伝えることがあります。さきほどまでの議論から帰結されることは、そのような行為はサプライヤーのリスク認識を増大させてしまうということです。RFQと実態が乖離している場合は、サプライヤーは少なめの数量を予想し、結果として長期的にはコスト高を引き起こします。
  • 競合体制構築の見直し……競合をすることでしかコストを安くできないというバイヤーがいます。それは前章で見たとおり、利益と固定費(非サンクコスト固定費)の無理な削減をもたらすことになるでしょう。もちろん、競合しないからといってコスト高を甘受せよ、といっているわけではありません。ただ、競合だけでは、無理のない理論的なコスト低減が実現できないことも事実なのです。

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