調達コスト決定戦略(1)コスト低減は率より額、利益も率より額を目指せ-3
・利益は率より絶対額を目指すもの
ここに、率だけで測る場合の陥穽があります。企業は、
- 率よりも絶対額を優先する
という基本的なルールがあるのです。誰だって、「率は低いかもしれないが、多くの利益を稼ぐことのできるビジネスチャンス」があれば、そちらを選択します。ただし、率だけですべてを評価しようという姿勢があればこの構造は霧散してしまうのです。コスト低減率の話を前述の例にあてはめても同じ結果になります。
もちろん、コスト低減率は高いにこしたことはありません。ただ、一体いくら低減できたのか、という観点を喪失していると、「結局のところ全体でいくら利益上昇に貢献できたのか」という鳥瞰した評価ができないのです。
加えて述べておくと、企業はどのようにして投資案件を決定するかというと
- 複数選択が可能である場合(資金が潤沢な場合)は%の高いほうから順に選び
- 単一選択のみ可能である場合は額の高いほうを選ぶ
という基本戦略があります。つまり、企業Bの例で言うと、売上高1千万円で製造原価4百万円というビジネスが何個も複製できるのであれば、利益率の高いほうを選択するわけです。だって、そのビジネスを10個複製できるのであれば、売上高1億円で製造原価4千万円になり、企業Aのビジネスモデルよりはるかに優れたものになりますからね。ただ、現実的には択一であれば、企業Aのように絶対額に優れたビジネスモデルを選択するわけです。
評価軸すらも疑って、過去と現在を克己し、常により良き状況創出に考えを巡らせること。これをヘーゲルは弁証法と呼びました。人間の変化とは、劇的なものではありません。企業の変化も同じことです。しかし、それは着実に起こります。そして、その変化の兆しとは、既存価値を疑うことと、既存価値をシフトさせようという決意に支えられているのです。