サプライヤから「売りたくありません」と言われたらどうするか
私が講師を務めるセミナーで、バイヤから最も多い質問です。話を聞いてみると、販売力と購買力を対比では販売力の方が強そうです。販売力の強いサプライヤに対し、通り一遍の短納期やコストダウン要求を行っていれば、最終的には「売りたくない」と言われてもやむを得ません。そんな言葉を言わせてしまったバイヤのミスです。売りたくないと言われたら、サプライヤ要求をすべて受け入れるしかない、私は毎回そう回答します。
調達・購買部門やバイヤが「ソーシング」「発注先選定」といった言葉で、サプライヤを選ぶ権利があるなら、サプライヤは顧客を選びます。買わざるを得ない事情があるなら、サプライヤは納期でされコストであれ理不尽な要求は受け付けません。こういったケースで気をつけたいのは「理不尽さ」は一方的にサプライヤの基準です。
調達・購買部門の最も大きな弱点は、買わない選択肢を持たない点です。この点が消費者の行う購買行動と大きく異なります。少し気が利く営業パーソンであれば、調達・購買部門だけではなく、購入要求を行う部門にも出入りして、需要の確実性を確認しているはずです。確実な需要情報を入手していれば、購入条件の交渉でも強気にでますよね。少し気が利く営業パーソンだったら提示する条件も足元を見てくるでしょう。最終的に購入しなければならないなら、営業パーソンとして当たり前の行為なのです。
バイヤはまず気の利く営業パーソンを上回る行動が欠かせません。購入要求部門との関係であり、正しい市場環境認識であり、特定のサプライヤに足元を見られない調達基盤の整備です。サプライヤに「売りたくない」と言われて、「あ、そう」と涼しい顔をして他のサプライヤに発注できれば問題にはなりません。サプライヤに「売りたくない」と言われて慌てる事態は、他にサプライヤがいないからです。
質問内容にはもう一つ共通点があります。「売りたくない」のは、あまり重要ではない、わかりやすく言えば購入頻度や購入金額が少ないいからです。重要な購入品であれば、サプライヤと関係構築に勤め、日常のやりとりも気を引き締め注意深く対処しているはず。サプライヤも同じでしょう。購入額が少なければバイヤも営業パーソンも多くの時間は割けずお互いが粗く対応してしまうのです。
重要なサプライヤであったとしても、購入条件でムリ強いをすれば最終的には「売りたくない」と言われる事態も想定できます。そういった事態は常に想定が必要です。想定しながらどこまでの要求であれば受け入れてくれるのか見極めているはずです。購入頻度や購入金額が少ない場合も、どこまで要求できるのかの見極めは欠かせません。あまり時間を費やせないのであれば、早々に見切った対応もアリ。売ってもらえずに大きなトラブルに発展するのであれば、サプライヤの提示された購入条件を受け入れるという判断も正当なのです。何でもかんでも同じトーンでコスト削減や納期短縮を要求するのは避けなければならないのです。
こういった考え方に違和感を覚えられる方も多いのでしょう。だからこそいろいろ厳しい話を、時間を費やして行うのですよね。誰しも限られた時間の中で最大限のアウトプットを求められます。その場合、あえて深く要求しない、求めないサプライヤがあってもいいのです。どんなサプライヤに対しても同じように対処するのは、何も考えていないのと同じ。だったら時間をかけない=あえて要求しないサプライがあってもよいのです。