2022年度の調達・購買戦略(牧野直哉)

日本の上場企業の9割以上が毎年4月に新しい会計年度をスタートさせます。逆算すると多くの企業で年明けから新たな年度に向けた戦略や実行計画の検討が行われるはずです。

 

今回は勝手に2022年度の調達・購買戦略の方向性を2つ考えてみました。2つに共通する点は、徹底的に2021年度に直面した事実と実体に根ざした対応です。今年度取り組んで難しかったこと、できなかったことを直視し、延長戦的に同じ取り組みを続けるのではなく、異なったアプローチを生み出すためにも現場に根ざした思考が必要と考えました。

 

1.       調達品不足対応

今年ほど日々様々な品目で「不足」が報じられた年はなかったと思えるほどに、様々な品目が不足し、納入フォローにバイヤーが奔走したことでしょう。思うように変えず不足対応に苦慮したバイヤーの皆様、大変お疲れ様でした。

 

量産メーカー、あるいは同じ品目を繰り返し購入するバイヤー企業であれば、比較的サプライヤの生産能力や供給能力を注意深く確認しているはずです。しかし多くの日本企業のお家芸である「多品種少量」は、少量であるが故にサプライヤの供給能力への関心が薄い場合もあるはずです。「多品種少量」は、供給能力を確認するといっても対象となるサプライヤ数は膨大になる可能性もあります。サプライヤ個別に生産能力と供給能力の確認が必要だ!と言ったところで「いちいちそんなことやっていられない」とバイヤーの悲鳴が聞こえてきそうです。

 

サプライヤへ個別に生産能力や供給能力の確認を行わないのであれば、 2021年度購入量以上の購入は実現できない前提で2022年度の計画を立案すべきです。日本国内あるいは全世界的な景気後退の波が押し寄せれば別。現在の景況が継続するのであれば、購入量増加はかなり困難であるとの前提で2022年度の業績見通しを行うべきです。

 

しかし2021年度対比でプラスの計画を社内要請により立案せざるを得ない場合もあるでしょう。企業であればプラス計画の立案はごく一般的です。そんな場合、提示された計画をベースに購入量の確定発注をできるだけ早期にサプライヤへ行いましょう。在庫リスクをバイヤー企業が負うものの、それほどに「不足」への対処は困難であると認識が必要です。不足によって生じるデメリットと在庫によって生じるデメリットを対比させ、意思決定を行います。取り組み自体は「在庫ゼロ」を目指す動きとは真逆です。だからこそ他社がやっていない可能性も高く、 2021年度とは異なってサプライヤの目に皆さんの主張が映るはずです。

 

2.       値上げ対応

私の「サプライヤからの値上げ要求対応セミナー」では、ある条件の下でサプライヤからの値上げ要求を受け入れましょうとお伝えしています。こういった内容は、受講される皆さんも過去との対比で違和感を覚えることなく受け入れていただいていると感じています。

であるなら、値上げ要求の都度、価格交渉して決定するより、価格の決まり方の交渉が、その後の効率的な調達購買業務の推進が可能です。価格の決まり方を、サプライヤを交え徹底的に検討し、何らかの外的要因による変動はすべて「価格の決まり方」に折り込みます。

この方法のメリットは、購入価格が外的要因の変動を反映する計算式によって自動的に反映される点です。市況が上昇すれば自動的に値上げ。下落すればバイヤーが注意していなくても価格に自動的に反映される点は大きなメリットです。

 

調達・購買部門/バイヤーのみなさんに今必要なのは、会社の行く末を見通すための社内関連部門とのコミュニケーション、社内外の情報を踏まえた戦略立案、事業運営に必要なサプライヤマネジメントです。価格交渉も確かに重要。しかし外的な要因による価格変動に関し、変動の都度いちいち交渉するのは非効率です。いちど「がっつり」価格構成内容やサプライヤと向き合って価格の決まり方について交渉してください。

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