値上げ対応のタブー

未来調達研究所では、日本で唯一「値上げ対応」に関するセミナーを定期的に実施しています。それは、ここ数年値上げ対応に対するニーズが極めて高くなっているためです。

今回はセミナーの中でお伝えしている「値上げ対応における3つのタブー」について、少しご紹介します。1つ目のタブーは、サプライヤーからの値上げ要求に対して、要求そのものを無視したり、放置したりすることです。

私も20年以上バイヤーをやってきました。サプライヤーからの値上げ要求は、できれば値上げ要求そのものをしてほしくない、値上げ要求の話などバイヤーの本能的に聞きたくないのが本音です。実際にサプライヤーからの値上げ要求を「ありえない」と無視した経験もあります。しかしその経験は、今ではバイヤー生活の中で最も苦い思い出になっています。

サプライヤーの側に立ってみればわかることです。もし担当バイヤーが無視を決め込んで、値上げ要求の検討すらしなかったことがサプライヤーに知れたらどうなるでしょう。サプライヤーの営業パーソンは、社内で「値上げ要求はどうなった?」と厳しくフォローされているはずです。そういったフォローに対して、営業パーソンが答え窮するような状況を作ったらどうなるでしょうか。

もちろん、サプライヤーの値上げ要求といっても、実現の必要性はサプライヤーごとに異なります。「とりあえず要求だけしてみるか」といった値上げもないわけではありません。しかし、サプライヤー社内の値上げ実現に対する切迫度が高ければ高いほど、サプライヤーの営業パーソンは困ります。困った挙句に「値上げが認められない場合、納入を停止します」といった要求をせざるを得なくなってしまうです。

サプライヤーにとって究極の要求とも言える「納入停止」を言わせてしまったら、バイヤーはどうなるでしょうか。他に代替え供給ソースがあれば良いのですが、供給ソースがない場合、あっという間にバイヤー企業が窮地に追い込まれてしまいます。そうなってしまったら、値上げ受け入れが供給継続の条件になってしまいます。

値上げ要求の無視や放置は、結果的に値上げ受け入れの最短距離になってしまうのです。バイヤーとして値上げを実現させたくない、仮に受け入れざるを得なくても条件闘争で値上げ要求の影響を最小限に食い止めたい。これがバイヤーの本心でしょう。しかし無視や放置によって、サプライヤーのペースで値上げが実現してしまうことが多い、この事実は、バイヤーが重く受け止める必要があるのです。

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