どんなときにサプライヤーの話を聞くべきか
バイヤーにとって情報収集、とくにサプライヤーにまつわる情報は業務を進める上で欠かせません。発注先を選定するとき、見積内容確認するとき、発注条件の交渉を行うとき、調達購買業務のあらゆる場面でサプライヤー情報は重要な判断基準になります。情報収集に同じ時間を費やしたとき、どんな状況であればより多くの情報をサプライヤーから引き出せるでしょうか。
もっともサプライヤーにまつわる情報が必要なのは、発注条件を交渉するタイミングです。同時にサプライヤーから最も情報を引き出しにくいタイミングでもあります。交渉を目の前にしておこなった情報提供が、どのような形で自分たちに作用するか判断できないためです。交渉前に提供される情報は、明らかにサプライヤーに有利になる内容でしかないと私は考えています。私たちの情報収集の主戦場は、タイミング的には交渉と最もかけ離れた時期が望ましいのです。
具体的にどのようなタイミングか。サプライヤー起因のトラブル発生時が、最も情報収集に適しています。事態の収束や原因追及、再発防止策の検討には、サプライヤーのあらゆる情報が必要です。サプライヤーに責任があるトラブルは、バイヤーにとって発生してほしくない事態でしょう。どんなに徹底した管理を行ってもトラブルをゼロにできません。バイヤーは一刻も早くトラブルを収束させるためにあらゆる手だてを講じる必要があります。そんな取り組みの一環として行った情報収集は、後々のビジネスに役立つ内容が極めて多いのです。
一例を挙げれば納期トラブル。一旦起こってしまえば自分たちのお客様に迷惑をかけます。社内的な調達・購買部門の立場も苦しくなり、事態が続けば社内への発言力も減退してゆくでしょう。トラブルの早期収束と再発防止策の徹底が必須です。納期トラブル解決には、リードタイム短縮が必要です。リードタイム短縮はどの程度の時間を要するのかを確認し、短縮するための方策を検討します。バイヤーとして検討プロセスに入り、打合せで議事の主導権を握ることによって、リードタイムを決める投入工数が掌握できます。工数が掌握できれば、コスト試算が可能です。私はトラブルの収束を通じ、実発生工数やサプライヤーの部品や原材料の調達リードタイム、調達先についての情報を獲得し、その後の業務に役立ててきました。
次に情報収集に適した場面は、営業パーソンとの日常会話です。一回の面談で会話する時間が短くても、何回も繰り返してコミュニケーションし、信頼関係を構築する過程で獲得する情報は、非常に有意義な内容です。日常会話の情報収集のポイントは「御社のコスト構造を教えてください」といった長い説明を要する質問ではなく、「御社の管理費は確実に20%超えてますよね?」といったYes/Noで回答可能な質問によるヒアリングです。一度の面談に1つの質問で全体像が分からなくても、ストーリー性ある質問内容を検討し、何度かに分けて回答を入手し再構築すれば有効な情報となりえるのです。
こんな情報収集方法も、新型コロナウィルスの影響により見直しを余儀なくされています。面談して2人だけで話をしていれば「ここだけの話」がしやすい環境も演出できます。オフィスの自席からWeb会議を行っている場合、同僚にも配慮が必要で踏み込んだ質問の回答も慎重にならざるを得ないのが実情です。とはいえ、私はもう少し様子を見る必要があるかと考えています。このままリアルな面談と同じような効果がWeb会議の「慣れ」によって得られるかもしれません。またすべてのコミュニケーションがWeb会議に置き換わるわけではなく、頻度は減少しつつこれからもリアルなコミュニケーションは行われるでしょう。Web会議でお互いの垣根を十分に取り払った上で、リアルなコミュニケーションを行えば、より濃密な情報収集も期待できます。
新型コロナウィルスの流行も収束の兆しが見えません。日本国内では感染者数も9月下旬以降はほぼ同数で推移。海外に目を向ければ、感染者数が増加し、再びロックダウンされています。従来とは異なり新型コロナウィルスの流行状況を踏まえながら、従来の業務をどう行っていくかが今問われています。まだまだ模索が続きますが、状況に応じて対応を変化させていく姿勢こそが重要ではないかと考えています。そんな姿勢で取り組まなければならないサプライヤマネジメントについてお知らせです。