見積金額が「高い!」と思ったらすること

見積書をもらった瞬間、魅力的な価格であったとしてもバイヤーの本能が反応して「高い!」と言ってしまうことがあります。バイヤーにとって挨拶のようなもの。私は金額を見た瞬間「これは魅力的な金額だな」と思っても、あえて「高い!」と口にしていました。そういった発言に問題意識を感じていませんでした。

 

よく考えてみると、見積書に記載される金額は、図面や仕様書、レシピによって表現された具体的なニーズを数値化したに過ぎません。サプライヤーの営業パーソンは、自分たちが売りたいものを好き勝手に見積書に記載している訳ではないのです。バイヤーの「高い!」との発言が「反応」であったとしても、「高い!」見積書の責任の一端は、必ずバイヤーにあります。

 

もう1つ、営業パーソンの立場に立って考えてみます。多くの営業パーソンはさまざまな顧客=バイヤーから提出した見積書に対し、「高い!」と投げかけられているはずです。したがってバイヤーの「高い!」発言に営業パーソンはあらゆる回答を準備していると想定すべきです。営業パーソンが準備した「高い!」理由について、バイヤーがすべて反論できれば問題ありません。少しでも「そうだな~」なんて納得してしまうとどうなるか。価格交渉を行うとき、サプライヤーの主張だけではなく、自らの「そうだな」と思ってしまった考えさえも覆して交渉を行わなければならないのです。

 

私は見積書を見た瞬間に「高い!」と言ってしまうこと自体、バイヤーとしての本性を現す言葉だしやむを得ないと思います。しかし「高い!」と発言したそのままで、何の根拠もなく価格を下げろ!と自分のポジションを決めてしまうのには問題が多いと思っています。見積書で提示された金額が本当に高いのかどうかを判断して、高い「理由」が指摘できるかどうかが多くのバイヤーと差別化をする第一歩と考えています。見積書を見て「高い!」と発言してしまうだけでは、私はバイヤーにとって敗北であり、発言の後にどのように対処するかがポイントだと考えているのです。

 

どのように対処すべきかのヒントは「見積依頼」にあります。見積金額が見積依頼書の内容を金額(数値)表現しているのであれば、高くならないような見積依頼書の作成が欠かせません。重要なポイントはできるだけ不確定要素を盛り込まないこと。そう言っても、どうしても見積依頼の段階では不確定要素が残ってしまう場合もあるでしょう。その場合は、不確定要素を明確にすることです。不確定要素は見積金額をアップさせる要因です。不確定要素についてサプライヤーがどのように金額に織り込んでいるかを確認するためにも、見積依頼時点での不確定要素の明確化は必ず行いましょう。

 

続いて、見積依頼書はできるだけわかりやすく具体的に書くこと。見積依頼書の具体的な部分を切り分けて、それぞれ価格の感度が欠かせません。切り分けの基準としては、原材料費や加工費・組立費といった人件費、サプライヤーの管理費用、そして利益です。サプライヤーの見積金額は、バイヤー企業にとっては100%コストです。しかしサプライヤーの利益が含まれています。利益がどの程度なのかといった点もバイヤーには欠かせない情報です。一定水準の適正利益はサプライヤーにも必要でしょう。「ぼろもうけ」されている状態はバイヤーにとっても避けるべきです。バイヤーはサプライヤーの発生コストだけではなく、利益レベルの掌握は欠かせないのです。

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