「だったらお前が買ってみろ」の言葉を胸に秘め

「自分の財布から金を払うつもりでやれ」

 

二十数年前、初めて調達・購買部門へ配属されたときに大先輩から何度も聞かされた言葉です。自分のお金と考えればむだ遣いはしないだろう?そんな理由で、何か購入価格決定に問題があるとき、何度も言われました。

 

でも、何かしっくりしません。自分の財布から払うには、金額が大きすぎるし、そもそも購入している製品は欲しくないモノばかりです。確かにバイヤーの姿勢として「むだ遣いはしない」考えに異論はありません。問題は「たとえ」です。自分の財布からお金を出して支払う実感がないのです。

 

日常的に行う「買い物」は、買うことが目的ではありません。生活するため、快適に過ごすため、楽しむために「買う」のです。一方、企業における「買い物」も、個人の買い物と同じように目的はあります。企業内の役割分担によって、調達・購買部門では「買う」ことそのものが目的です。

 

企業の「買う」行為は、できるだけ低い価格で効率的に行います。自分の財布に象徴される個人の懐具合をできるだけマイナス=むだ遣いしないのではなく、業績への貢献度向上こそが重要だと考えるに至りました。そして企業の「買う」行為を突き詰めるほどに、個人の買い物との違いを実感しています。

 

例えば、個人の買い物は「買わない」選択肢をもっています。先日新しいiPhoneが発表され今週発売します。新しい機種が欲しいと思う反面、今の機種でもさして不満はないと「買わない」選択肢を模索しています。

 

しかし企業内で「買わない」選択肢は実に限定された状況です。お客さまから受注した製品を販売するために調達・購買部門では「買う」のです。市況や需要が高止まりして、なかなかよい条件が引き出せなくても、要求品質を確保し指定された納期通りに買う必要があります。これは「買わない」や「あきらめる」選択肢をもつ個人の買い物とは大きな違いです。より制約条件が多い中で、業績に貢献する「買い」を実現するためには、様々な情報やノウハウが必要なのです。

 

もし「買い物なんて誰でもできる」と調達・購買部門を揶揄(やゆ)する人に出会ったら「あぁ、この人は企業における調達・購買の仕事が本当にわかっていないんだな」と広い心で傾聴し、そんな言葉を吐く人には絶対できない調達・購買を実現するスキルを日々鍛えましょう。そしていつの日かこういってやりましょう「だったらお前が買ってみろよ」と。

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