調達・購買部門がなくなる?!

「サプライチェーンの失敗」が企業業績に悪影響をおよぼす、とコメントする企業が増えてきました。業績見通しや発表を行う企業のトップから「サプライチェーン」なんて言葉が発せられる企業は、その重要性を組織的に認識しているあかしです。

 

「サプライチェーン」には、調達・購買部門とサプライヤだけではなく、メーカーであれば自社の工場内物流や、顧客までの供給方法が含まれます。調達・購買部門が多くのサプライヤから購入している場合、企業全体のサプライチェーンに占める調達・購買部門の役割と責任は大きくなるでしょう。この点は調達・購買部門の将来に大きく影響します。

 

私は仕事柄、調達・購買部門の将来の姿を考えます。最近は、今のままでは調達・購買業務は、その多くが将来的には消滅するのではないか、そんなふうに考えるようになりました。調達・購買部門の皆さんと一緒に仕事をさせていただいている私からすれば、かなりの暴論です。でも、発注先選定や価格査定、価格や購入条件を決める交渉といった調達・購買部門の業務は、今後データが活用されたり、人工知能を活用したりすれば、かなりの部分が機械化・自動化が可能です。

 

私はセミナーで自動的にサプライヤ評価を行う方法を教えています。サプライヤ評価そのものに価値はありません。結果の活用にこそ付加価値の源泉があります。バイヤーは評価に手をかけずサプライヤをどのように取り扱うかの方針決定と、その実践に注力できます。調達・購買部門の将来を考えるとき、今の業務をそのまま継続する前提は間違っています。日本では人口減少が進み簡単には解決しません。だったら人が減る前提で、どんな業務内容を設計するかが、これからの調達・購買部門に欠かせないテーマになるはずです。

 

調達・購買部門の将来業務を設計するためには、少なくとも自社とサプライヤを含めたサプライチェーン全体の視点は欠かせません。加えて、社内から顧客までのサプライチェーンとの整合・同期を円滑に行うといった調整も必要です。こういった仕事すら自動化・AI化できる可能性もあります。しかし、単位当たりの生産量が少なくなり、多品種の生産を実現するために必要な柔軟性を、自動化しAI化するのはまだ時間が必要です。その部分に、まだ人間が活躍できる余地が残っているのです。

 

皆さんの所属部門は調達部ですか?資材や購買といった名称かもしれません。看板の名前に縛られず、自社とサプライヤを含めた「サプライチェーン」の視点で、付加価値の創出や業務の効率化が、これからの企業の競争力を決定づけます。「サプライチェーン」が話題になるのは何か大きな災害が起こったときのみ。そんな企業ではこれから生き残れなくなるのです。

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