逆説的なイノベーションを起こそう

私は「メーカーの場合、設計者とバイヤーの席の(実際の)距離が近ければ近いほどモノは安く買えるのではないか」という仮説を持っている。

現在は仕事の「e」化が進んでいる。設計者ともサプライヤーとも関係部門とも、全てメールで済んでしまう時代だ。

もちろん、その流れは否定するべきではなく、歓迎すべきことだ。実際に一度も会うことなく、仕事が完了してしまうことも多々ある。

しかし、である。あえて仮説を述べずにおられない。

「製造業においては、バイヤーは設計者の近くにオフィスを持つべきではないか」と。

これは流布しているeコマース取引とは逆の主張である。構造が精神を変える、といいたい。そして、その精神は果てに、企業の利益となって表れる。

eコマースや、ERP化が進んでいる現在だからこそ、この仮説を述べたいのだ。

表面だけコストダウンが実行されたように見えても、実質は何にも安くなっていない企業は設計とバイヤーの距離(繰り返し、実際の距離)が遠いのではないか。

以前ある企業の方からこのような話を聞いた。

「以前は小さな会社だったので、設計と購買が同じフロアだった。そのときは夜中までワイワイやりながら一丸となっていた。だけれど、会社が大きくなって設計と購買のフロアがわかれてから一変した。新たに入ってくるバイヤーは、そもそもモノに興味を無くし、設計の思考も学ばず、パソコンのやりとりだけでどこまでも合理的に済ませるようになった。これが現在の停滞の原因かもしれない」

あくまでも、仮説であるが、私の仮説を前提に考えると、あまりに興味深かった。

同じ購買の仕事でも会社が違えば、信じられないくらい違うことをやっている。設計者との関係も全然違う。

例えば、トヨタであれば、設計者と購買部門が一緒にサプライヤーとの会議に出てくるが、日産自動車では完全に設計と購買が分離している。

両社の違いがどのような結果を生むかは、まさに私の仮説が間違っているか正しいかを知ることにもなるのでさらに興味深い。

ある優良企業のバイヤーはこう語っていた。

「設計者の近くに席があんの。それで、図面印刷するとか、部品のカタログ調べるとか、なんでもやるの。それくらいやんなきゃ、仕事はわからない」

実際の真意は、バイヤーが小間使いになっている現状を自傷したものか?

あるいはその密度から醸成される一体感と使命感とパワーを述べたものか。

もちろん本当のところは分からない。

だが、あえて歪曲することで、気づくこともある。

そしてその気づきから、自分の職場や自分の業務スタイルを改善していくこともできる。

・物理的な障害があるのなら、せめて週に一回定期的に設計との会合を開いてはどうだろうか?
・メールではなく、設計者には直接会いに散歩するのはどうだろうか?
・たまには購買のメンバーだけではなく、設計者と昼ご飯を食べてみてはどうだろうか?

バイヤーの可能性を信じることは、こういう反時代的な、あまりに反時代的な側面からしか、私にはもうできないのだ。

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